陸産巻貝における同所性 2 種の時間的分離
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概要
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カレハマイマイ属(Mesodon)とオチバマイマイ属(Triodopsis)は, アパラチアマイマイ科(Polygyridae)の別亜科に属するが, 収斂進化の結果, 互いに類似した貝殻を持つ種を多く含む。オオセダカマイマイ(M. normalis)とシロクチマイマイ(T. albolabris)の貝殻は, 特に著しい類似を示し, 米国アパラチア山脈の南部で共存する普通種である。一方, ヒラハマイマイ(T. dentifera)の貝殻形態は両種と異なり, また相対的に小型である。これら種の共存地域において, 標識再捕実験を行った。その結果, シロクチマイマイとヒラハマイマイは著しく夜行性であるのに対し, オオセダカマイマイは夜間以外にも活動し, 頻繁に林床上に現われることが明らかになった。この陸貝共存種における活動日周期の種間変異は, 野外で実証された初めての例である。この現象は, 乾燥抵抗性や捕食圧の種間差によって説明できない。しかし, これら陸産巻貝の食性, 気候適応の特性, 生息環境の諸条件に加えて, 別に報告されたオオセダカマイマイの活動日周期における形質置換及びシロクチマイマイとの共存によって被むる成長阻害を考慮すれば, これら種間の活動日周期の差異は, 同一微小環境における共通の有限資源をめぐる種間競争の結果生じた, 資源の時間的分割であると考えられる。
- 日本貝類学会の論文
- 1988-12-15
著者
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