食用油とそのゲル化油の酸化安定性
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概要
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食用油の酸化防止法の研究は,栄養学的にも食糧資源の有効利用の面からも,重要な命題と思われる.食用油の大部分は液状の形態で使用されるが,液状油の成分組成を変えないで固形化して,しかも室温での酸化状況を研究した事例は見当たらない.水素添加したヒマシ油からの分解脂肪酸は12-ヒドロキシステアリン酸を多量に含み,この脂肪酸は油脂をゲル化する能力がある.我々はこの脂肪酸のゲル化能に着目して,食用油をゲル化させその自動酸化の状況を調査して,酸化機構の解明と,応用面への展開を期待してこの研究を行った.実験は市販の植物油について,それぞれ3〜5%のゲル化剤を添加して試料油を調製し,室温・散光下での自動酸化の状況を過酸化物価によって追跡した.酸化試験の試料油容器は,主としてシャーレを使用したが,ビュウレット,試験管による試験で興味ある結果が得られた.すなわちビュウレットなどによる試験ではゲル化油の方が安定性がよいことがわかった.しかもゲル化油全体が酸化遅延するのではなく,空気との接触面が著しく酸化され,そこから離れた部分の試料油の過酸化物価が低いことから,ゲルの内部に酸素が浸透しにくいものと推定した.特にえの油は適切な抗酸化剤が見当たらないので,この事象の応用面への進展が期待される.
- 名古屋文理大学の論文
- 2001-04-01
著者
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石井 貴子
名古屋文理大学専攻科食物科学専攻
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市川 和昭
名古屋文理大学
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石井 貴子
名古屋文理短期大学
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小山 吉人
名古屋文理短期大学
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垣内 久美
平成10年度専攻科食物科学専攻
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市川 和昭
名古屋文理短期大学
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