コモンズと環境保全 : サモアにおけるエコツーリズムの試み
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本稿では,「環境保全」と「観光による経済効果」を結び合わせようようというエコツーリズムの試みを,南太平洋のサモアについて検討する.サモアでは,伝統的な農村共同体が強く残っており,国土の約8割は慣習地である.これらは共同体の慣習地(コモンズ)として管理・保有されてきた.しかし,現在ではコモンズの私有化が進んでおり,人口増加や農地需要の増大に伴って森林伐採も進行している.小さな離島という地理的条件から,工業化による経済発展の道は大きく制限されており,観光産業の育成が国策となっている.その中で,農地拡大に対する代替策として,サモア人自身によるコミュニティー・レベルでのエコツーリズムの取り組みが始まっている.ホテル経営は,コミュニティーに収入をもたらすだけでなく,活動の企画づくりや国内外のネットワークづくりなどの広い意味での資源管理能力の向上にも有効な相乗効果をもたらしている.サモア人自身によるエコツーリズムの活動では,資源管理の障害と見なされてきたコモンズや農村共同体制度が足かせとなるどころか,助けになっている.かれらのコミュニティー・レベルでの取り組みから学ぶべき点は多い.一方,国には財政力がなく,土地も慣習地が多いために十分な環境保全主体となっていない.国際援助が増額傾向にある中,エコツーリズムにおいても彼らの権利,社会規範および主体性を尊重した,きめ細かな支援が求められている.
- 千葉大学の論文
- 2000-03-31
著者
関連論文
- モンスーン・アジア灌漑農業の発展段階 : フィリピンの事例
- 米国における大気及び水質汚染 : 主要汚染物質に関する州別データを用いた分析
- ごみ処理サービスの需要分析 : 千乗県を事例として
- フィリピンの稲作およびコーン作の効率性構造 : イザベラ州の事例
- フィリピンの稲作およびコーン作の効率性構造--イザベラ州の事例
- 収穫後技術の経済的評価 : フィリピンにおける米とトウモロコシ乾燥の事例
- 小学校における農業体験学習の効果 : 東京都練馬区を事例として
- 都市公園に対する選好と経済価値 : 横浜市三ッ池公園を事例として
- 都市住環境アメニティの経済学的評価 : 大阪府北摂地域の場合
- 食品安全性とリスク学習過程 : 卵のサルモネラ汚染を事例とするWTP関数の推計
- 中国東北部における農村都市労働移動の実態
- Adaptive LearningモデルによるWTP関数の推計 : 卵のサルモネラ汚染
- フィリピン公共灌漑投資の規定要因 - グレンジャー因果性による検証 -
- 食品安全性に対する消費者受容態度 : 意識調査による分析
- フィリピン・コーン農家の技術的効率性 : フロンティア費用関数による接近
- 北部フィリピンのトウモロコシ作の実態 : イザベラ州における農家調査による
- スリランカ稲作における農家採用技術の地域差
- コモンズと環境保全 : サモアにおけるエコツーリズムの試み
- 農地改革の生産性効果 : 山形県の稲作データによる検証
- フィリピン・ラグナ州耕境稲作農村の「緑の革命」期における土地・労働・生計
- スリランカ稲作における労働集約度の規定要因
- 戦前期米穀関税と国内米価 : Grangerテストによる因果性の検討
- フィリピン・コーン農家の技術的効率性 : フロンティア生産関数による接近
- 都市住宅環境における農地と緑地のアメニティ評価-メッシュ・データを用いたヘドニック法による接近-
- 千葉市住宅地域における環境要因の評価 : メッシュ・データを用いたヘドニック法による
- 東アジア・東南アジアにおけるバイオエタノール原料としてのサトウキビ生産 : 中国とフィリピンにおける小規模サトウキビ農家の生産構造