若きプレスナーの思想形成過程(1)
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概要
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私は先に,ヘルムート・プレスナーの哲学的人間学の主著である『有機的なものの諸段階と人間』を中心に,彼の主要な人間学思想を総括するとともにこれに論評を行った。本論文においては,この主著の完成以前の若いプレスナーの思想形成過程に焦点を当てて,彼がどのような思索の過程をへて自らの哲学的人間学の根本思想に到達するにいたったのかを考察する。若きプレスナーの思想形成過程をたどりながら,そこに織り成された思想の軌跡をさぐる作業は,彼の哲学的人間学の誕生の秘密とその本質を解明するうえで大いに貢献するであろう。本稿ではその第一部として,プレスナーの処女作である『学的理念』を取り上げる。プレスナーが動物学を専攻しながらわずか21歳の時に書き上げたこの哲学的著作は,彼が生物学から哲学への転向のきっかけをなしたものであり,その着想を彼の直接の師であるドリーシュに負いながらも,フッサールの論理学研究を下地とし,さらにフィヒテなどのドイツ観念論の影響を色濃く残している。われわれは,プレスナーがここで,後に彼が自ら「学的な前進の神学」と特徴づけたように,世界の論理化という学問の発展過程を,自然科学的または社会学的な視点を離れて,きわめて伝統的で形而上学的・神学的な手法で取り扱っていることに驚かされる。こうした形而上学的・神学的視点は,彼の主著『有機的なものの諸段階と人間』の結語として表現されている思想と通底しているのである。
- 札幌学院大学の論文
- 2005-03-31
著者
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