近世山村における豪農経営と地域社会 : 延岡藩領日向国臼杵郡高千穂郷甲斐家を事例に
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概要
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近世期の山村社会において、経済的ヘゲモニー主体はどのような存在であったのかを、日向国日杵郡高千穂郷岩戸村の酒造家甲斐家を対象に分析を行った。甲斐家は元禄五年に分家し、享保期以降酒造業に着手する。甲斐家は藩への献納により宝暦期には郷士小侍に取立てられ、以後献納を繰返し天保期には給地四石二斗・一○人扶持・籾五俵に至るが、献納を可能にしたのは家業の酒造業と高利貸業であった。甲斐家は居村をはじめ周辺村々で高利貸を展開し、質地の担保は耕地であったが積極的な地主経営には発展しなかった。また酒造業面では、藩の払米や肥後熊本藩領の馬見原町などから移入して一二○〜一六○石ほどの酒造を行っていた。酒は周辺村々に販売され、その消費量から儀礼や贈答のほか、飲酒が広く行われていたことがわかる。甲斐家からの借銀や酒代返済には、山産物とくに麻苧・煙草・茶・菜種などが充てられて相殺された。甲斐家では集荷された山産物を、城下商人や在郷町商人たちに売却し、代わりに生活必需品はもとより海産物や書籍類などまで購入しており、生活文化水準の高さが窺われる。幕末期には用水路開削など地域への社会貢献も行っている。
- 2005-03-22
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