1株当り利益と損益計算書の融合までの過程
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概要
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本稿は、1株当り利益が損益計算書に表示されるようになった経緯を明らかにしたものである。1株当り利益と会計基準は次のような変遷を経た。まず、1株当り利益は投資社会における手っ取り早い判断基準として1920 年代に利用されるようになった。しかし、初期の会計基準では1株当り利益を会計数値とはしていなかった。これが、1966 年以降に、会計基準の責任において1株当り利益の危険性を排除するものへと会計基準の姿勢が大きく転換した。そして、APBO 15により、遡及修正再表示と稀薄化の織り込みの規定が整備され、1株当り利益の危険性が排除されたのである。以上の変遷から、1株当り利益が1969 年以降に損益計算書に表示されるようになった理由が次のようにまとめられる。会計基準による規定に伴い1株当り利益は企業の中長期的趨勢を表示するものとしての性質を強め、包括主義損益計算書の企業の中長期的趨勢を重視するという目的と方向性が合致した。この結果、包括主義損益計算書における1株当たり利益は、単に投資指標が損益計算書に記載されているというのではなく、損益計算書のボトムラインとなる会計数値として表示されているのである。
- 北海道大学の論文
- 2005-06-09
著者
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