イヌの抽象的な数的概念に関する学習心理学的研究(平成14年度麻布大学公的研究助成金事業研究成果報告)

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本研究では,イヌにおける抽象的な概念の分類システムについて探ることを目的とし,イヌの同一・非同一性の概念,さらに数的カテゴリーの概念を検証するためにオペラント条件づけ装置を用いた見本合わせ手続きによるテストを行った。そこでまず,イヌが単一の図形の違いを正しく識別できるかどうかを検討する目的で,視覚刺激として円・三角・四角の図形を用いた見本合わせ訓練及びテストを2頭の柴犬に対して行った。本実験では中央に提示される見本刺激と同じものを左右の比較刺激から選択すると正答となる選択型同一見本合わせ手続きを用いた。供試犬は見本と同じ比較刺激が提示された方の返答穴に鼻を人れて反応すると,それを正反応として報酬である餌が与えられた。訓練では1セッション30試行の見本刺激を変えずに提示し,テストでは30試行中3種の図形をそれぞれ10試行ずつ見本刺激としてランダムに配列した。刺激の選択・配置はゲラーマン系列の乱数表に従って行った。達成基準として21試行(70%)以上の正解が3セッション連続した時点で弁別可能とした。1頭は訓練で全ての図形において3〜7セッションで基準に達した。テスト移行後は,26セッション目で正解率70%を示し,その後も継続して実験中である。もう1頭は訓練で円形のみ3セッションで基準に達したが,四角形では基準に達していない。これまでの結果から,イヌは二者択一による図形の弁別は可能であり,また今回製作したオペラント条件づけ装置かイヌにおける認知研究を行なう上で有用であることが確認された。見本合わせに対する学習の構えは未だに成立していないと思われるが,すでに正解率が70%を超えるセッションが見られていることから,今後,見本合わせに対する学習の構えが成立することが予想され,数的概念など,イヌにおけるより高度な認知研究が期待できるであろう。

イヌの抽象的な数的概念に関する学習心理学的研究(平成14年度麻布大学公的研究助成金事業研究成果報告)

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