新潟県上越市の海岸に漂着したイシイルカ2例

概要

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最近8年間(1979∿1986)に, 日本海の海岸に漂着した小型歯鯨類は10種(イシイルカ, オキゴンドウ, ハナゴンドウ, マイルカ, コビレゴンドウ, イチョウハクジラ, オオギハクジラ, コマッコウ, ツチクジラおよびバンドウイルカ), 沿岸の定置網に混獲されたのは3種類(カマイルカ, オキゴンドウおよびシロイルカ)が知られている。このうちイシイルカは, カマイルカと同様に, 第二次世界大戦前後には商業的に捕獲され, イルカ漁業の重要な対象種であった。イシイルカ(Phocoenoides dalli)は, 主に北太平洋の寒冷海域に分布し, dalli-type と truei-type の2体色型がある。日本海には dalli-type のイシイルカが生息している。日本海のイシイルカは, 冬には島根沖まで南下し, 夏には北上し, 津軽海峡を経て北西北太平洋あるいはオホーツク海まで達すると推察されている。 1983年2月11日に雄218cm (M. 26257), 1986年2月1日に雌207cm (M. 26625) のイシイルカ dalli-type 2個体が新潟県上越市の海岸に漂着した。いずれも4.5歳で, 肉体的成熟に達していた。後者の脊椎骨数は94個 (C7+D18+L24+Ca45=94) で, 前者のそれよりも (C7+D18+L23+Ca45=93) 腰椎が1個だけ多かった。計測した44部位のうち, 5部位 1)側頭骨窩長, 2) 口蓋骨長, 3) 歯槽後端から吻基部までの距離, 4) 下顎窩長および 5) 茎状舌骨長)で, 両者の間に顕著な差がみられた。北西北太平洋で多数採集されたイシイルカ dalli-type の計測値と比較することによって, 個体差を考慮した上で, 今回得られた標本にみられる雌雄差および系統群による特徴について検討した。第二次世界大戦前後には, 日本海においてイシイルカが突棒で漁獲されていた。漁獲されたイシイルカの性比と体長組成を, 北西北太平洋で同じ漁法で捕獲したイシイルカのそれと比較した。その結果, 性比と雄の体長組成には両者の間で差異がみられないが, 雌の体長組成には平均値に統計的に有意な差があり (t-test, P<0.01), 日本海のイシイルカの雌は北西北太平洋のそれよりも大きかった。この雌の体長組成の差異について, 次の2つの可能性が考えられる。第一は系統群の差異によるもの, 第二は棲み分けによるものである。しかし, 現段階では得られた資料が少ない為に, どちらの可能性が合理的なのか判断できなかった。
1986-12-01

新潟県上越市の海岸に漂着したイシイルカ2例

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