ヒナの気嚢および脳継代によるA型トリインフルエンザウイルスの神経病原性の増強

概要

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SPFヒナの気嚢あるいは脳で継代したA型トリインフルエンザウイルス(A/whistling swan/Shimane/499/83(H5N3))を3日齢のSPFヒナに気嚢内接種し, 各継代株の病原性の比較と脳病変の継時的変化を検討した. 実験1では, 原株は軽度の気嚢炎と肺炎を惹起したが, 全例が生残した. 18代および24代(24a)気嚢継代株接種ヒナの致命率は50および67%であり, 接種ヒナは重篤な臨床症状と主要臓器における出血性および壊死性病変を示した. 24aをさらに5代脳継代した株(24a5b)を接種されたヒナの致命率は100%で, 重篤な神経症状を示し, 重度の循環障害と脳を含む主要臓器に多発性壊死が見られた. 24a5b株の病原性は強毒トリインフルエンザウイルスに匹敵した. 従って, 弱毒株が気嚢および脳継代により徐々に強毒株へ変異したことが示された. 実験2では, 24a5b接種のヒナの脳に最も早く出現した病変は接種後18時間における血管内皮細胞の腫大で, その後, 壊死性脳炎が出現した. 免疫組織染色では, ウイルス抗原は最初に血管内皮細胞に現れ, 次いで, 肥満膠細胞, 神経細胞および上衣細胞に認められた.
社団法人日本獣医学会の論文
1997-03-25