日本藍藻類第六
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概要
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本報告には13屬,25種3變種について記載した.若干は廣布種であるが,大多數は分布上特異なる植物である.就中 Synechococcus はすべて温泉より知られたもので,そのうちS. sublividus, S. praelongus, S. caldasius. は日本固有の種類に屬し, S. eximius, S. Minervae var. major は北米合衆國黄石公園の温泉に於て發見せられ此度また本邦にて勸察し得たるものである.その他 Microchaete thermalis, M. bulbosa, Oscillatoria jasorvensis, O. ibusukiensis, O. Jovis var. acuta 等は注目すべき種類である.之等も亦温泉産であつて多くは「日本産温泉植物の研究」に一度發表した.しかし論文の性質上その記載は簡に過ぎるものもあり,又單に學名を擧げるに止めたものも少くないから,ここにそれ等の缺を補ふために稍々詳細に記述することとした.尚 Lyngbya の一品を新種として發表してある. Chroococcus. 177. Chr. pallidus NAG. 植物塊は殆ど無色又は淡黄色乃至橙色.細胞は球形にして孤生し或は2-4(稀に8箇)宛集合せる小群體を造る.細胞質の大さ5-8μ,粘質鞘はかなり厚く7-11.5μに達するが,無色にして層を成さず.濕濡岩石又は池沼に産する.京都市北白川産.178. Chr. helveticus NAG. 植物塊は稍々膠質樣,細胞は球形にして徑4-7.5(稀に9)μ,通常2-8箇集りて群體を成す.粘質鞘は薄く無色.濕岩又は沼澤に生じ,往々微温泉に産す.別府市郊外地上,阿蘇湯山温泉産(18℃). Synechocystis. 179. S. thermalis COPELAND. 本種は S. aquatilis SAUV. に酷似するが,細胞は一層小形で徑1.5-2.0μ.孤生し又は分裂直後は2箇連生する.細胞質は均質,藍緑色を呈する.尚原記載には徑1.8μ以内になつてゐるが筆者の材料中には2μに達するものが少くない.北米黄石公園の温泉にて發見されたるもの.指宿河原湯温泉(56-57℃). Synechococcus. 180. S. eximius COPELAND. 植物體は畧々卵形を呈し徑1.8-2.5μ,長さ2.2-3.5μ.通常孤生し,分裂中は2箇連生する.細胞質は均質,淡藍緑色.北海道川北温泉(36℃). 181. S. sublividus EMOTO et YONEDA. 細胞は一定の彎曲を示し,常に孤生する.徑1.1-1.4μ,長さ4-9μ兩極に1箇宛顆粒を藏する.S. lividus 及びその var. curvatus に似てゐるが,前者は主として直桿状であり且僅に長い.又後者は顆粒の位置が不定にして一層大形であるから容易に區別し得る.本種は分裂後直に分離し細胞の連生することは稀にしか見られない.揖宿潟口温泉(41-47.5℃),河原湯温泉の濕濡岩石上. 182. S. praelongus EMOTO et YONEDA. 細胞は孤生し又は2箇連生する.徑1.2-1.6μ,長さはその5-15倍に達し,細長なる圓〓形をなす.殆ど眞直なるものあれど概ね僅かに彎曲する.細胞質は淡藍緑色.顆粒を藏せず均質.一見 S. lividus に似てゐる.けれども多くの細胞體は遙かに長形であり且顆粒を全然缺如せるにより容易に識別し得る.揖宿二月田温泉(59.4℃). 183. S. Minervae var. major COPELAND. 植物體は孤生又は2箇連生する.徑3.6-4.2μ,長さはその1.5-2.0倍.細胞質中に數個の顆粒が散在する.奈良縣湯泉地温泉(27.9℃). 184. S. caldarius Yo. OKADA. 植物塊は薄層を成して展開し暗緑色を呈する.細胞は直桿状又は稍々彎曲し,徑2-2.8μ,長さ6-16μ.孤生するのが普通であるが分裂旺盛なるときは數箇連生する.細胞質中の顆粒は數も位置も共に一定しない.岡田要之助博士が八甲田山酸ヶ湯温泉にて發見,筆者は指宿温泉群中に之を採集し得た.
- 日本植物分類学会の論文
- 1941-03-30
著者
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