日本藍藻類第一
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概要
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筆者は数年前から淡水藻類に興味を抱いていたが,恩師小泉教授のご指導とご援助とによって日本に於いては未開拓の此領域について研究調査を開始した.淡水藻のうちでも特に藍藻類に関する吾人の知識は極めて乏しいから其のフロラを明かにすることは重要である.日本に於いては如何なる種類が如何なる場所に産するか.筆者の査定し得た種類を少しづつ発表することにした.極めて断片的な報告であるが逐次累積する資料によってやがてはできるだけ完全な日本藍藻史とでも云うべきものを造りあげたい所存である.本報告には18属38種5変種を含んでいるがそのうち日本新産と認めらるるもの23種3変種に及んでいる.次に各種について簡単な説明をする.括弧内は細胞の大きさを示し,数字はミクロンを単位とする長さ,br. は幅,1. は長さを表すものとする,数字のみは直径の意.Microcystis. I. M. marginata (MENEGH.) KUTZ. 群体は略々球形,粘質塊の厚く丈夫なるを特徴とする.細胞は球形,時に稍長味を帯びる.(3-5) 京都深沼ヶ池.2. M. aeruginosa KUTZ 群体の形は多種多様であるが何れも格子状に破れているのが特徴である.到る処に多いプランクトンで水荒を起こし所謂青粉を形成するもの.(3-7) 世界的.京都嵯峨の廣澤池,大澤池に夏期饒産するのが見られる.3. M. flos-aquae (WITTR. ) KIRCHN. 群体は多く球形であるが色々の形を取るので前者と区別し難い場合がある.両者を同一と見なす学者もある.(3,5-6) 湖沼に普通なプランクトン,京都深沼ヶ池,4. M. pulverea (WOOD) MIGULA. 群体は球形,プランクトン又は挺水植物に付着,(2-3) 京都深沼ヶ池,乗鞍岳金山池日本新産.5. Var. incerta (LEMM.) CROW. 前者と細胞の大きさを異にするのみ,(1-2) 京都深沼ヶ池,日本新産.6. M. parasitica KUTZ. 群体は不定形,粘質塊も不明瞭,プランクトンとなることもあるが多くは水草に付着している,(1,5-2) 京都深沼ヶ池浮島のミヅゴケに付着,日本新産.
- 日本植物分類学会の論文
- 1937-09-30
著者
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