本州中部産ネコノメソウ属の一新種および一新変種
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概要
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岐阜県南東部および京都市北部,南西部に隔離分布する一新種,Chrysosplenium pseudopilosumを記載した。この種はシロバナネコノメソウ列ser. Pilosaに属し,以下の形質をもつ点で特徴づけられる。1)萼は緑色で鐘状,2)萼片は先が円形またはやや切頭形で萼筒とほぼ同長,3)雄ずいと花柱は萼片から突出,4)葯は黄色,5)子房はほぼ上位またはその約25%のみが基部で萼と癒合する。このような形質の組み合わせをもつ花はシロバナネコノメソウ列のどの種にも見られない。長いストロンを持たないことや種子の形状などからツクシネコノメソウC.rhabdospermum(以下ツクシ),シロバナネコノメソウの仲間C.album(以下シロバナ),コガネネコノメソウの仲間C. pilosumに類似するが,子房が上位に近いというネコノメソウ属の中でも稀な特徴を重視すると,この新種はシロバナに最も近縁と考えられる。しかし萼が緑色で萼片が萼筒とほぼ同長である点はツクシにもよく類似する。最近の分子系統学的研究(Nakazawa et al., 1997)で,シロバナとツクシは単系統群であることが示唆されているが,これを考慮にいれれば,この新種はシロバナとツクシの間をつなぐ分類学的位置をもつものと推定される。また,岐阜および京都に生育する植物の間には,いくつかの形質で違いが見られるので,後者を新変種と認めヤマシロネコノメvar. divaricatistylosumと命名,記載し,基準変種トウノウネコノメ(岐阜県東濃地方に分布することによる)var. pseudopilosum(以下トウノウ)と識別した。ヤマシロネコノメは1)花がやや大きい(直径約4.6ミリ)(トウノウでは3.5-3.8ミリ),2)萼の背軸側に毛が散在(トウノウでは無毛),3)さく果の宿存2花柱の間の角度は,約140。から180。に展開(トウノウでは50。から80。),4)種子表面には半円形のいぼ状小突起が縦に列生し,隆起した肋はほとんど目立たない(トウノウでは隆起した肋上に棒状の小突起が列生),などの特徴をもつことで区別される。
- 日本植物分類学会の論文
- 1999-08-28
著者
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