ホトトギス(ユリ科)の核型変異
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概要
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ホトトギスは核型に変異が大きい。染色体数は2n=26が多いが,2n=24と25もみられる。Ogihara(1971)は2n=24は2n=26の2対の末端動原体型染色体のcentric fusionによりできたもので,2n=25のものは両者の雑種であると推察したが,今回の観察もそれを支持するものであった。2n=24の集団はOgiharaの見いだした伊豆半島と房総半島に加えて紀伊半島の集団でも確認された。紀伊半島のものは他の染色体の形態が伊豆半島や房総半島ものとはかなり違う。centric fusionを含めたRobertsonia fusionは植物でもあまり珍しくはないとの見方もあるが(Jones, 1977),ホトトギスという1種の中で並行的にこのような変化が起きたとは考え難い。従って,このような違いは,2n=24ができた後,他の核型を持つ植物との交雑などによって生じたと考えられる。染色体の形態はきわめて変異が大きかったが,地理的にある程度のまとまりが見られ,5つのタイプを認めることができた。そられは,(I)関東地方と伊豆半島,(II)中部地方内陸部,(III)中部地方西部と紀伊半島東部,(IV)紀伊半島西部(V)四国と九州,(VI)北九州の犬が岳である。染色体の相称性は東部から西部へと低くなる傾向があったが,犬が岳のものは東日本の方に近かった。四国と九州のホトトギスは花被片が広くてその上にある紫色の斑点は細かく,中部地方のもの葉が細くてしばしば葉や茎の毛が少なくなる,という特徴がある。しかし,西日本のものがより進化しているという証拠はない。
- 日本植物分類学会の論文
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