電子システムの国際規格IEC 1508の動向と国内の関連規格化
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概要
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最近、安全に関連する装置に情報処理機能を付加する傾向が著しくなっている。情報処理を行うコンピュータそれ自体が複雑な装置であり、コンピュータを導入した安全に関連する装置は、必然的に複雑な装置となる。このような装置の安全規格の制定には、次の点を考慮しなければならない。 (a)<装置全体は部品・機器の規格全体をもってしても縛れない>___- : コンピュータの技術革新は著しく、コンピュータを部品・機器の仕様規格で縛ることは、技術革新を否定することにもなりかねない。 (b)<部品・機器の仕様規格が必ずしもシステム全体の安全を保証しない>___- : システムが複雑になると、ハザードも多様になり、あるハザードを特定な方式で抑制することが他のハザードによるリスクを増大させるなど、リスクの制御関係が非線形化してくる。このような場合では、経済性などの制約下でのシステム・リスクの最小化問題が生じ、全体システムのソフト的管理手法が必要になる。 (c) <通商貿易間題>___- : 構造上の仕様規格は本質的に非関税障壁となる。例えば、欧州の安全規格に係る非関税障壁問題が米国から指摘されている。 (d)<事後安全対策と事前安全対策>___- : 安全対策は、事後対策と事前対策の2種類に分類できる。新しいシステムでは、災害・事故が起きると深刻な社会問題になるので、事前対策が重要になる。事前安全対策の実施に際して、何らかの規範・水準が望まれる。 以上のような背景から、複雑な全体システムに対して、(1)そのライフサイクルを対象として ; (2)事前安全評価に基づき ; (3)安全関連系の果たすべき安全機能に対する要求事項を特定し ; (4)そのために計画・設計・製造・操業・管理・監査などをどのように行うかを規定する機能(性能)安全規格が必要である。 ドラフトIEC 1508「機能安全 : 電気/電子/プログラマブル電子(以下 E/E/PE)安全関連系」は、複雑なシステムを対象とした機能安全国際規格である。この規格は、公式な発効前から、例えばイギリスの国内安全規格やNASAの公式文書中など各方面の規格やガイドラインに引用され、わが国でもJIS化が進捗中である。また、本規格に基づいたプロセス産業用 IEC 1511 もドラフト化が進んでいる。 平成8年の初めに IEC 1508 に対してCDVを実施し、多くのコメントが提出された。それらのコメントに対処すべく、1年あまりの期間、WGのメンバーが精力的に規格策定活動を行った。本報告では、それらの活動によりドラフトに加えられた修正のうち最も重要と思われるものの一点を述べ、本ドラフトの現況を紹介すると共にJIS化の状況についても述べる。
- 社団法人電子情報通信学会の論文
- 1997-08-13
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