マイクロ波散乱計データを用いた船舶海上風観測値の誤差評価
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概要
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船舶で観測通報されている風向風速値の誤差をNSCATによって観測された海上風データを用いて評価した。また,風速計で観測された風速について中立状態海面上10mでの風に換算し,風速計設置高度補正の効果を検証した。補正前のデータについて比較した結果は次の通りである。風向については,バイアス誤差は-0.16度と極めて小さいが標準誤差は大きく平均で44度にもおよぶ。風速については,全体としては船舶観測値が1.30 ms^<-1>過大評価である。これは過去の研究結果が示すバイアス誤差と定量的にもほとんど一致している。平均の標準誤差は2.83 ms^<-1>であった。風速計観測のみとの比較では,バイアス誤差は平均1.42 ms^<-1>,目視観測との比較では, 0.93 ms^<-1>それそれ船舶観測が過大であり,標準誤差はそれぞれ2.78 ms^<-1>と2.74 ms^<-1>であった。船速別に風速を比較した結果では,停船時にはバイアス誤差が小さいが,それ以外の船速ではバイアス誤差は1.2 ms^<-1>前後過大評価である。標準誤差は全体としても2.4 ms^<-1>を越えている。船首方位を基準に真風向を分けて比較した結果では,真風向か船尾側のときバイアス誤差が0.71 ms^<-1>,船横からの風で1.33 ms^<-1>,船首からの風では1.80 ms^<-1>と,いずれも過大評価で順に大きくなっている。この傾向は観測手法別で見ても共通している。標準誤差は船尾からの風が他の方向からの風に比べて若干小さく2.5 ms^<-1>前後,船横および船首からの風については2.6 ms^<-1>〜3.0 ms^<-1>である。風速計設置高度の補正をした風速値を比較した結果では,全体としてバイアス誤差は改善され-0.44 ms^<-1>となり高度補正の有効性が示された。しかし,標準誤差は2.59 ms^<-1>から2.85 ms^<-1>に若干大きくなった.目視観測ではLindau (1995)の手法での補正を行ったが,顕著な改善は認められない。このほか,風速頻度分布を調べた結果では,測器観測,目視観測とも頻度分布に,NSCAT観測風には認められない二つのピークが見られた。
- 日本海洋学会の論文
- 2003-07-05
著者
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