海面熱フラックス変動から見た北半球における大規模大気海洋相互作用について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
海面熱フラックス(潜熱フラックスと顕熱フラックスの和)と北半球の大気大循環との関係を北半球の冬季について特異値分解(SVD)解析で調べた。その結果,北太平洋で卓越する熱フラックスアノマリーのパターンは,大きなアノマリーが北太平洋西部から亜熱帯循環系に沿って中央部に伸びるパターンとなっていた。一方北大西洋で卓越するパターンは,西部で南北振動的なアノマリー分布を示した。これらの卓越する熱フラックスのパターンは大気大循環のテレコネクションパターンと密接に関係している。すなわち,北太平洋で卓越する熱フラックスパターンはPNAパターンと,北大西洋ではWAパターン(Wallace and Gutzler, 1981)とそれぞれ対応している。両太洋とも卓越する変動パターンでは数年程度の時間スケールの変動が目立っている。しかし,10年以上の長周期変動は北太平洋については認められたが,北大西洋では現れていない。また,海面熱フラックスと海面水温の時間変化率との関係についても調べた。両者の相関を各格子点毎に計算したところ,一般に相関は有意であるものの係数の絶対値は1より小さい。このことは海面水温時間変化率が海面での熱フラックス変動だけでなく,海洋上層での温度の水平移流や鉛直混合などによっても変化することを示している。海面熱フラックスと海面水温時間変化率とのSVD解析によると,両海域とも,第1SVDモードにおけるそれぞれの量の空間パターンは互いに極めて類似している。そしてそれらの空間パターンは,海面熱フラックスと500hPa高度場などとのSVD解析で得られた海面熱フラックスの空間パターンともよく似ている。これらのことは,北太平洋・北大西洋とも卓越する海面水温変動パターンは大気大循環のテレコネクションパターンによって組織化されていることを示している。
- 社団法人日本気象学会の論文
- 1995-08-25
著者
-
岩坂 直人
東京商船大学
-
Wallace M.
The Joint Institute For The Study Of The Atmosphere And Ocean University Of Washington
-
Wallace John
The Joint Institute For The Study Of The Atmosphere And Ocean University Of Washington
関連論文
- 日本周辺の長期にわたる沿岸水温資料を用いた歴史的海面水温資料に対する補正の検討
- デジタル化されたKobe Collection : 歴史的海上気象資料のデジタル化がもたらす海洋・気候研究の新展開
- いくつかの時間スケールを考慮した海面水温場と大気循環場、および大気海洋間フラックス場との関係
- 直接観測による西部太平洋海面日射フラックスの研究
- オホーツク海とベーリング海の海氷分布についての研究
- ライダー,サンフォトメーター,フィルターサンプリングによる大気境界層エアロゾルの光学的性質に関する研究(2.1.プロジェクト研究)([2]共同利用研究(平成9年度))
- 偏光ライダーによる東京都心の大気境界層の観測
- 多波長ミー散乱偏光ライダーとサンフォトメーターの同時観測による対流圏エアロゾルの光学(2.1.プロジェクト研究)([2]共同利用)
- レーザーレーダーによる大気環境計測 : 東京商船大学における観測を中心として
- INMARSATデータ通信を用いるウェザールーティングシステムの研究 : コンテナ船における実船実験
- 研究課題 リモートセンシングデータによる船舶海上風観測値の評価(2.2一般研究)([2]共同利用研究)
- 船舶の遭遇海象と船体運動の実態-III : 荒天中の機関馬力とプロペラ回転数変動
- 東京におけるライダーによる大気境界層の偏光解消度の測定
- ライダーによる大気境界層エーロゾルの偏光特性
- 船舶の遭遇海象と船体運動の実態 : 自動計測記録システムの構築
- TRMM降雨レーダ観測による月平均降水量推定値と地上観測値の比較
- WOA98で見た世界の海洋構造と流れ
- 海面熱フラックス変動から見た北半球における大規模大気海洋相互作用について
- 北太平洋の「うねり」観測特性
- ボエジレコーダ(航海自動記録装置)の開発研究 : 装置の開発思想とその仕様
- 船舶の遭遇海象と船体運動の実態-II : 北太平洋航路就航コンテナ船による連続計測
- 船舶自動気象観測装置の洋上試験
- 研究課題 GMSデータを用いた太平洋西部の海面長波放射収支の研究(2.2一般研究)
- 日本を取り巻く海の地形 海底俯瞰図と地形の解説(CD-ROM版), 財団法人 日本水路協会海洋情報センター, 2003年刊行, 定価 3,000円
- マイクロ波散乱計データを用いた船舶海上風観測値の誤差評価
- 研究課題 GMSデータを用いた太平洋西部の界面長波放射収支の研究(2.2.一般研究)([2]共同利用研究)
- D160 船舶による海上風観測値のNSCAT海上風観測値による誤差評価(歴史的海上気象観測データ(神戸コレクション)のデジタル化と研究の展望)
- 研究課題 リモートセンシングデータによる船舶海上風観測値の評価 課題番号A2000-14(2.2一般研究)([2]共同利用研究)
- 課題(11-19):海面エネルギー収支観測における衛星データ利用法に関する研究(新規)(2.2一般研究)([2]共同利用研究(平成11年度))
- 1979年〜1995年の北半球における季節内変動についての研究
- 課題(10-15):衛星データを用いた雲と放射収支の研究(継続)(2.2一般研究)([2]共同利用研究(平成10年度))
- 気象解析学, 廣田勇著, 東京大学出版会, 1999年3月15日初版, A5版, 175頁, 本体定価4,800円+税
- 衛星データを用いた雲と放射収支の研究(2.1.プロジェクト研究)([2]共同利用研究(平成9年度))
- 船舶を用いた西部熱帯太平洋における全天日射量の広域観測