光軸方向に温度分布がある光ファイバブリルアンリングレーザの発振特性:実験
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概要
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光ファイバリング共振器に入射した光は、共振時にリング内で極めて高い強度となる。その結果、比較的低い入射光パワーで各種非線形現象が生じる。なかでも誘導ブリルアン散乱光(SBS:Stimulated Brillouin Scattering)の発振閾値は特に低く、数mW以下の入射光パワーで「光ファイバブリルアンリングレーザ」が実現される。ところで、一般にリング状の光路を一周するのに光が要する位相回転は、同一面内で光路が回転するとその速度に比例して変化する。Sagnac効果として知られる上記物理現象は反対回りの光では変化の符号が逆になる非相反な効果であるため、双方向の発振が独立なリングレーザであれば両者の発振周波数差から回転角速度が検出される。つまり、このようなレーザにより慣性空間に対する回転速度センサ(=ジャイロ)が実現できる。実は、光ファイバブリルアンリングレーザはまさにそうした光ジャイロ応用が可能なリングレーザである。実際、ブリルアン利得は入射ポンプ光とは反対の伝搬方向にしか発生しないため、左右双方向にポンプ光を注入して発生する2つのSBSの間には利得競合がない。本ジャイロ(B-FOG:Brillouin Fiber Optic Gyro)は2つの出射光のビートがそのまま回転速度を示すため他の光ジャイロに比べ外部光学系の簡素化が図れる可能性を秘めている。さて、光ファイバブリルアンリングレーザを光ジャイロに応用する場合に特に問題となるのはSBS発振の安定性である。安定化の手法を考案するためには本レーザの基本特性の把握が不可欠である。今まで本研究室では、光ファイバ内の光の偏波に着目して発振状態の検討を進め、偏波変動誘起雑音に強いと考えられる構成を2種類提案している。また、光ファイバの光軸方向に温度分布や引っ張り歪み分布が存在すると発振閾値や発振周波数に変動が生じることも理論的に示してきた。温度が均一な場合や特定の温度分布の場合については検討が既に行われていたが、文献[11]は、ブリルアン利得媒体となっている光ファイバが5m〜30mと長いために不可避的に存在する不均一な温度分布(歪み分布)に関する一般論を新たに示したものである。今回の報告では上記理論検討に引き続き、実験面から温度分布の影響を検証した結果を報告する。
- 社団法人電子情報通信学会の論文
- 1995-03-27
著者
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