日本海盆奥尻海嶺玄武岩の岩石学 : 島弧およびプリュームタイプの火成作用
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概要
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奥尻海嶺玄武岩は, 岩石記載, 主要・微量全岩組成, REE組成, 鉱物組成の特徴などに基づき, 5つの岩石群へと分類される。これらはその成因的関係からA (グループ1, 2, 3), B (グループ4とピクライト), C (グループ5) の3つの岩石系列へと区分される。A系列は著しく発泡しMORBに類似した全岩主要元素組成を示すが, インコンパチブル元素は島弧的性格を有する。B系列はMORBとOITとの中間的な全岩組成を有しており, 発泡の程度は低い。インコンパチブル元素やREE組成はOITとしての特徴を示す。C系列はAとBとの中間的な特徴を示す。グループ2は分化しており, 低圧での分別結晶作用によって生じたと見られる。グループ3は最も未分化な組成を有しているが, 単斜輝石が斑晶として出現しており, 高圧下での結晶分化作用を被っているとみられる。単斜輝石のCr量はMg値の低下に伴って急減するが, その急減するMg値はグループ毎に異なっており, 輝石の出現時期が異なっていたことを示す。A系列のクロムスピネルの組成は島弧玄武岩的性格を示す。斜長石のFeO^*とMg値は系列毎に異なった変化を示す。A系列では分化の初期からAn 70付近までFeO^*が増加しMg値も増加するが, それ以後は減少する。こうした組成変化は島弧玄武岩の斜長石と類似している。B系列ではAn 72が最もカルッシクな組成で, FeOはA系列よりも低いがMg値は類似している。斜長石の組成における両系列の違いは, 酸素分圧と水の量, 斜長石の晶出時期の違いによって説明される。奥尻海嶺玄武岩は, 島弧的性格を刻印されたA系列, 海洋島玄武岩的性格をもつB系列, 両者の中間的なC系列からなっており, こうした特徴はODPによって得られた結果とも整合的である。しかし, 一般的な背弧海盆玄武岩はN-MORBとIATとの中間的な性格を有している。こうした違いは, これらの背弧海盆玄武岩はintra-Oceanicな環境で形成されているのにたいし, 日本海の場合は大陸の縁辺部が裂開して形成されたという構造環境の違いを反映しているのかもしれない。
- 日本地質学会の論文
- 1995-11-30
著者
-
坂本 泉
東海大・海洋
-
土谷 信高
岩手大・教育
-
坂本 泉
東海大
-
池田 保夫
Department of Geology and Mineralogy,Faculty of Science,Hokkaido University
-
池田 保夫
北海道教育大学釧路校
-
宮下 純夫
Department Des Sciences De La Terre Universite D'orleans : Department Of Geology And Mineralogy
-
池田 保夫
Department Of Earth Science Hokkaido University Of Education At Kushiro
-
池田 保夫
地学団体研究会北海道支部:北海道教育大学釧路校
-
土谷 信高
Department of Geology, Faculty of Education, Iwate University
-
坂本 泉
Department of Marine Resources, Faculty of Marine Science and Technology, Tokai University
-
土谷 信高
Department Of Geology Iwate University
-
池田 保夫
北海道教育大学釧路校地学研究室
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