アマルガム組織の腐食による変化
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概要
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各種アマルガムを37℃, 0.5%食塩水中に6カ月間浸漬した後, 走査型電顕ならびにエネルギ分散型X線マイクロアナライザを用いて, 組織変化および腐食生成物を調べた.アマルガムには, 含亜鉛ならびに無亜鉛の従来型削片状, 球状アマルガム, 削片状Ag_3Sn合金にAg-Cuを添加した高銅型アマルガム, およびAg-Sn-Cu三元合金に少量のInを含む高銅型アマルガム, 計11種を選んだ.従来型アマルガムにおいては, γ_2相が選択的に腐食し, その跡からSnとClが検出された.試験片表面は隆起状の厚い腐食生成物におおわれており, その生成物は主としてSnとClを含む内層とSnに富む外層の2層から成っていた.またγ_2相ほどではないが残留γ合金粒子にも腐食のあとがみられた.Ag-Cu合金を添加した高銅型アマルガムにおいては, γ_2相がほとんど存在しないために著しい腐食は認められなかった.表面はCuに富む小さな結晶におおわれていた.Cu_3Sn相の跡ならびにγ相近傍からSnとClが検出されたことから, これらの相が比較的腐食されやすいことがわかった.Ag-Sn-Cu三元合金を用いた高銅型アマルガムは, 3カ月まではすぐれた性質を示すが, 3カ月から6カ月にかけて異常な圧縮強さの低下, 多量のCuならびにHgの溶出, および著しい組織変化がみられ, 試験片表面にはロクショウの生成が認められた.これらはInの影響によるものと考えられる.また, すべてのアマルガムの腐食生成物中あるいは表面に, 腐食の結果新たに成長したと思われるγ_1相が観察された.腐食相(Clの侵入)は, 従来型, 高銅型いずれにおいても含亜鉛アマルガムに比して無亜鉛アマルガムで一般に深部まで認められ, 4mmφの試験片の中心部にまで達しているものもあった.
- 1981-11-25
著者
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林 一郎
九州歯科大学歯科理工学講座
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Moore Keith
Department Of Dental Materials Indiana University School Of Dentistry
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小園 凱夫
九州歯科大
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Swartz Marjorie
Department of Dental Materials Indiana University School of Dentistry
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Phillips Ralph
Department of Dental Materials Indiana University School of Dentistry
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