攪拌槽内におけるクロレラ懸濁液のフロック形成とその破壊 : (2〜3の実験的検討)
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概要
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液相あるいは気相中に懸濁した微細粒子の凝集と分散の機構およびそれらの速度についてはとくにコロイド科学の分野で現象の基礎的解析に関する多数の研究報告が古くから発表されてきている. 一方, 撹拌槽内の微生物懸濁液について微生物フロックの形成とその破壊現象に関する報告は少なく, 菌体の分離・回収などに応用できる基礎的解析にも多くの課題が残されている. これは微生物細胞個々の表面の生理的, 生化学的状態が非常に多くの未知な因子によって影響され, したがってその表面状態とも密接に関連する細胞群の凝集・分散現象の定量的把握を著しく困難にしているからであろう. 目的 微生物懸濁液の濁度を連続的に測定する装置 (受光素子=C_dS (特性値δ=2.62) (Fig. 2)) を邪魔板のない撹拌槽内に設置して, 撹拌の場における微生物細胞群によるフロックの形成とその破壊とを定量的に観察し2〜3の基礎的考察をおこなう. 実験方法 実験に使用した微生物はChlorella vulgaris Beijerink C-30である. 培養後 (培養液組成はTable 1参照) 菌体を充分洗滌してその濁度が-logT=0.5 (530mμ) になるように蒸溜水に懸濁し毎回の実験試料とした. クロレラ懸濁液の濁度とその濃度 (mg/ml) との関係はFig. 1参照. フロック形成に必要なイオンの種類・濃度およびpHなどの条件を適宜設定し, 本実験における主な操作変数を撹拌羽根の回転速度とした. 毎回の実験では濁度測定装置に付属する記録計にクロレラのフロック形成および破壊に対応してそれぞれ増大および減少する電圧が記録されるようになっている (Figs. 3および4). なお, フロックの大きさはFig. 2cのサンプラーを用い顕微鏡写真撮影で平均値を求めた. 実験結果および考察 フロックの形成と破壊とは可逆的に進行し履歴現象はみとめられなかった (Fig. 5の一例). したがってクロレラの細胞群はたがいにゆるやかな三次元的配列のもとで含水率の大きいフロックを形成しているものと考えられる. フロックの含水率εはフロックの寸法d^^-rの関数として表現できたが-Eq. (8) およびFig. 6-, これはMuellerらが最近提出した活性汚泥フロックの含水率の実験値をも大体表現するようである (Fig. 7). このように高い含水率のフロックは機械的な剪断によって容易に破壊される. フロックの大きさd^^-rと剪断速度とに関連して簡単な仮定を設けてEq. (13) を導いたが, この関係式もこの実験範囲では実験値の傾向を表示するように考えられる. なお, 微生物のフロックの形成については各値イオン濃度, pHなどの影響とともにとくにその形成速度 (2次反応としての反応速度), またフロックの破壊については乱流場の影響などは今後, 定量的に検討すべき課題である.
- 社団法人日本生物工学会の論文
- 1970-03-25
著者
-
合葉 修一
東京大学応用微生物研究所
-
平田 亮
東京大学応用微生物研究所:(現)東洋レーヨンk.k.
-
渡辺 毅
東京大学応用微生物研究所
-
渡辺 毅
東京大学応用微生物研究所:(現)住友化学工業k.k.大阪製造所
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