アルコール醗酵における生産物阻害 : 阻害のパターンに対する再検討
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
我々は, 前報においてアルコール醗酵における生産物(エタノール)の菌の増殖および醗酵に及ぼす影響を速度論的に検討し(1), (2)式をえた. ここにμ=比増殖率(hr<^-1>), μ_0=比増殖率の最大値(hr^<-1>), ν=アルコール比醗酵速度(hr^-1), ν_0=アルコール比醗酵速度の最大値(hr^<-1>), P=エタノール濃度(g/l), S=基質(グルコース)濃度(g/l), k_1(l/g), k_2(l/g), K_8(g/l), K^, _3(g/l)=定数. (1), (2)式はLineweaver-Burk プロットを行なうことにより得られ, この阻害が, 酵素でいう「非拮抗的阻害」に対応することを示している. しかし定数k_1,k_2は各実験系によって異なった値を示し, この定数の意味を論じることは, 指数型で表わされているためむつかしい. 一方(2)式は酒の醸造に適応し, よい一致をみたがこの場合エタノール濃度は20%近くで本実験における条件(エタノール濃度=0〜60(g/l))とはかなり異なっている.前報の結果を1/μ(または1/ν)とpにプロットし直すと, (Figs.1,2)直線がえられ, 本実験の範囲で, (5), (6)式のように表現することも可能である. ただし, 式中K_p, K'_p=定数. (6)式は, 前述の酒の醸造結果を説明できなかったことは, エタノールの阻害現象が複雑であることを示していると考えられる. (5), (6式から, 菌体というin vivoの反応が, 酵素反応というin vivoの反応と対応がつくため、K_p, K'_pの意味が, 前報に比し明確になった. 例えば, 振とうフラスコ実験におけるK_pが, 連続培養の場合の値より小さいという結果からは, 菌の増殖に関与する中心の酵素に対する阻害物質としてのエタノールの親和力が振とうフラスコの方が大きいと推測できる. K'_pは連続培養の値がワーブルグ検圧計実験の値より大きかった. こうした事実は, 菌の多面性を示していると考えられるが, スケールアップ等工学的問題を解決する手がかりの1つとなるであろう. なお(5), (6)式は, 安定性の議論を進める上では, (1), (2)式より数学的に便利である.
- 社団法人日本生物工学会の論文
- 1969-12-25
著者
関連論文
- 非ニュートン流体の混合時間
- 306 酵母の反応速度論
- アルコール醗酵における生産物阻害 : 阻害のパターンに対する再検討
- 生産物阻害の動力学アルコール発酵における例 : (第1報)回分実験
- 119. 代謝生産物による増殖および代謝阻害
- 224. 微生物増殖過程のKinetics
- 暗・好気連続培養におけるRhodopsseudomonas spherroides Sの増殖効率
- 362. 活性汚泥中に出現するVorticellaの増殖速度
- 361. 活性汚泥生物の分離, 培養, 同定
- 250. 都市下水処理における活性汚泥の性状
- 423. Azotobacter vinelandiiのエネルギー代謝 : (II) ATP獲得・利用効率のマクロ的検討
- 422. Azotobacter vinelandiiのエネルギー代謝 : (I) Chemostatにおけるglucose dissimilationの様相
- Azotobacter vinelandii増殖における収率因子の解析
- 114. 微生物の動特性に関する研究 : (第5報) 炭素源制限下におけるデルタ変動による増殖, 糖消費の過渡解析
- 113. 微生物の動特性に関する研究 : (第4報) 炭素源制限下におけるデルタ変動のKinetics
- 微生物の動特性に関する研究 : Azotobacter vinelandiiの回分, 連続培養における2,3の実験
- 222. 微生物の動特性に関する研究 : (第3報) 非定常域における増殖因子の挙動
- 221. 微生物の動特性に開する研究 : (第2報) 定常域における希釈率, 制限基質の代謝活性におよぼす影響
- 通気培養槽における攪拌所要動力および酸素移動容量係数の測定について(第1報)
- 生物化学工学の将来 : 昭和39年度日本醗酵工学会大会(11月11日)におけるパネルディスカッション
- 攪拌槽内におけるクロレラ懸濁液のフロック形成とその破壊 : (2〜3の実験的検討)
- 活性汚泥法による下水B.O.D.の除去に関する二、三の実験 : 特に活性汚泥のいわゆるバイオソープションについて
- 活性汚泥法における下水B.O.D.減少曲線の解析
- 酵母懸濁液の沈降に関する研究
- 培養液の溶剤抽出に関するシミュレーションと最適化 : 生産物回収工程の全最適化への試み
- 培養液の濾過に関するシミュレーションと最適化
- 酵素プロセスの最適化へのFeasible Decomposition MethodならびにModified Complex Methodの適用
- 熱殺菌に関する研究 : (第6報) 熱殺菌による醗酵培地の変質ならびに最適熱殺菌条件の決定法について
- 219. 熱殺菌に関する研究 : (第6報) 醗酵生産の最適化における培地熱殺菌の影響
- 熱殺菌に関する研究 : (第5報)細菌胞子凝塊の耐熱性と殺菌成功率におよぼす影響について
- 熱殺菌に関する研究 : (第4報)微生物細胞の物性 : (その3 熱拡散率と比熱)
- 熱殺菌に関する研究 : (第3報)微生物細胞の物性値について : (その2 熱伝導率)
- 熱殺菌に関する研究 : (第2報)微生物細胞の物性値について : (その1 密度)
- 306. 熱殺菌におよぼす胞子凝塊の影響について
- 305. 微生物細胞の熱伝導率と耐熱性の関係について
- 熱殺菌に関する研究 : (第1報) 細胞胞子の耐熱性と殺菌成功率に関する考察(生物化学工学特集号-II 滅菌および培養工学)
- 95. 培地熱殺菌に関する微生物学的研究 : (第1報) 細菌胞子の耐熱性分布と絶対殺菌確率の推定について
- エアレーションにおける表面活性剤の影響(第2報)
- エアレーションにおける表面活性剤の影響 (第1報)
- 通気培養槽における攪拌所要動力および酸素移動容量係数の測定について : (第2報) クエン酸醗酵への適用(生物化学工学特集号-II 滅菌および培養工学)
- 105. 通気培養槽における攪拌所要動力および酸素移動容量係数の測定 (第2報)
- 50. 通気培養槽における攪拌所要動力および物質移動係数の測定 : (第1報)特に非ニュートン流体について(平成38年度 日本醗酵工学会大会講演会研究発表要旨)
- 醗酵における物質移動 : とくにグルコン酸醗酵における酸素移動について
- n-アルカンを炭素源とした酵母培養-1,2-〔英文〕
- n-アルカンを炭素源とした酵母培養 : (第2報)n-アルカン取込み機構の一考察
- n-アルカンを炭素源とした酵母培養 : (第1報)回分培養
- 232. 石油醗酵に関する研究 : (第2報) 菌体生産速度におよぼす操作条件の影響
- 231. 石油醗酵に関する研究 : (第1報) 回分培養における菌体の増殖速度および収率について
- 微生物の凝集に関する二・三の実験
- 213. 微粒子の凝集と分散に関する基礎的研究 : (第2報) 微生物のゼータ電位と凝集について
- 高粘性液における炭酸ガスの拡散係数について
- 331. 微粒子の凝集と分散に関する基礎的研究 : (第1報) 微生物の電気泳動度に影響をおよぼす因子
- 321. 高粘性液における気体分子拡散係数について
- 非ニュートン液における気体分子拡散係数の測定(生物化学工学特集号-II 滅菌および培養工学)
- 104. 非ニュートン液における気体分子拡散係数の測定
- 光合成細菌の培養槽における光吸収速度 : Monte Carlo法による解析
- 406. 石油醗酵に関する研究 : (第四報) 石油醗酵における動力学および制限基質の油滴の粒径の推定
- 214. 微粒子の凝集と分散に関する研究 : (第3報) 攪拌槽中におけるフロックの成長について
- 新しい型式のエア・フィルターについて
- 直管内における微生物懸濁液の残余濃度曲線について(生物化学工学特集号-II 滅菌および培養工学)
- 96. 連続殺菌装置における混合について
- 227. 醗酵における反応速度論的研究
- 濃厚パン酵母懸濁液の流動特性
- 最近5年間の国内における醗酵工業関連分野の研究開発の一動向