可搬式機械による林業労働の人間工学的研究(II) : 可搬式機械の運搬作業が生理的負担に与える影響について

概要

論文の詳細を見る
(1)可搬式機械の運搬は, 機械の林内搬入と作業のための小移動に分けられるが, これらによって生じる心拍数の増加率は, 全体を通じて, ほぼその機械本来の目的作業(伐木, 玉切, 刈払など)よりも大きく, 特に搬入作業においては, はるかに大きい値をとる。(2)上記の増加率は, チェンソーでは持ち方によっても, かなりはっきりした相違がみられる。例えば, 片手持ちと肩かつぎでは, 前者が大きい。また刈払機では, 機械本体が長いことによるのかも知れないが, 肩かけと手持ちおよび肩かつぎの間に差がみられる。このことから持ち方に一つの工夫をしていくことも, 人間工学的側面から重要であろう。(3)増加率は, 運搬の方法が同一であっても歩行勾配に左右されるようである。可搬式機械については, 機械の軽量化, 運搬方法の工夫など生理学的側面からの問題に対する対応策は考えられるが, 林業での可搬式機械は, 目的作業の場合とは別個に, 持ち運びの分野をどのように人間工学的に改善していくかが重要な課題と言える。その意味で, 自走式タイプへの発展もそれへの一つの脱皮の方法ということになるであろう。
1975-01-25