水分条件の違う土じょうに移植されたスギ苗の遊離アミノ酸量の変化
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概要
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移植後の土じょう水分欠乏がスギ苗のアミノ酸代謝に及ぼす影響について調べた。4月中旬にスギ2年生苗を素焼鉢に移植し, 土じょうの含水率を55〜65%(A)と40〜45%(B)に保持, および65%に調整したのち無給水で放置(C)の3処理をした。苗木は昼夜20℃, 8,000lux(12時間照明)のグロースキャビネット中に入れ, 5日目(A, B)または4日目(C)ごとに試料を採取した。移植後B, Cにおいては苗木の含水率の低下が著しく, 枯死寸前の状態にまで乾燥した。発根は10日目にAの苗木にのみ認められた。ペーパークロマトグラフィー法により, 14種の遊離アミノ酸と2種のアマイドがみいだされた。おもなアミノ酸はアラニン, プロリン, アスパラギン酸, グルタミン酸で, これらで全アミノ酸量の70〜80%を占めた。アミノ酸濃度は移植後増加する傾向を示し, B, Cでは特に顕著であった。含水率120%前後のとき枝葉のアミノ酸濃度は最大となり, その後はわずかに減少した。一方根ではアミノ酸濃度は増加し続けた。枝葉の多くのアミノ酸は含水率が120%前後以下になると濃度が低下したのに反し, アラニン, プロリンは比較的低含水率まで増加した。特にプロリンの増加は著しく, 最初の濃度の10倍以上に達した。しかし根ではプロリンの増加はあまりみられず, むしろアラニン, グルタミン酸の増加が著しかった。移植苗は根系の吸水条件などが悪いために, 移植後のわずかな土じよう水分欠乏も苗木の含水率を低下させる。その結果としてスギ苗のアミノ酸代謝が大きく乱されたものと考えられる。
- 日本森林学会の論文
- 1971-11-25
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