スギ苗の窒素転流におけるシトルリンの役割
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概要
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SCHOLANDER型のプレッシャーチャンパーによってスギ苗の根株(約10cmの幹のついた根)および幹から樹液を採取した。スギ苗の樹液中には種々の窒素化合物, たとえば無機のアンモニア硝酸のほかに15〜18種類のアミノ酸, 分子量5万以上の高分子化合物などが含まれていた。しかし5月と6月の樹液についてみると, アミノ酸以外の化合物に含まれる窒素は全窒素の約1/4程度であった。アミノ酸のうちではシトルリンに含まれる窒素が最も多く, 全窒素の約2/3を占めた。樹液中のアミノ酸濃度は季節によって変化し, 生長期に高く, 冬に低くなった。一方アミノ酸組成(全アミノ酸に対する百分率, モル比)は年間を通じてほぼ一定で, 生長休止期にセリンがやや高くなったものの, 1年を通じてシトルリンが常に高率(66〜87%)で存在した。樹液中のアミノ酸の移動形態を確かめるために, シトルリンの前駆物質であるオルニチン-1-^<14>Cを水耕スギ苗に与え, 24,48時間目に樹液を採取した。樹液中にはシトルリン, グルタミン酸, セリンなど数種類の化合物に放射能が認められたが, この場合にもシトルリンが全放射能の半分以上を占めた。したがって種々の窒素化合物が蒸散流によって地下部から地上部へ運ばれていると考えられるが, スギでは根から地上部への窒素の供給は主としてシトルリンの形で行われているものと考える。
- 1975-04-25
著者
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