スギ苗の可溶性窒素および遊離アミノ酸の季節変化
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概要
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露地植えのスギ苗の枝葉・幹・根に含まれる全窒素, 可溶性窒素および遊離アミノ酸の季節変化を1970年8月から1971年11月まで調べた。可溶性窒素および全アミノ酸濃度は苗木のいずれの部位でもほぼ同じ季節変化を示し, 春にそれらは増加した。秋にも地上部でそれらが増加する傾向を示した。春先, まず根において可溶性窒素と全アミノ酸の著しい増加がみられ(3月), ついで幹(3〜4月), 枝葉(4〜5月)にこれらの増加が出現した。これら化合物の増加時期の部位による時間的ずれは, それぞれの部位における春の生長開始およびその後のおう盛な生長期の時間的ずれと一致した。すなわち生長の開始期には遊離アミノ酸や可溶性窒素濃度は高くなった。また5月には前年生長枝葉と幹で窒素およびアミノ酸濃度が4月に比べてかなり低下した。このことは前年生長部位から当年生長部位への窒素化合物の転流が4月から5月にかけて起こった結果によると考えられる。このような窒素化合物の季節変化, とくに春の苗木部位による違いは, 基本的にはスギ苗の生長習性によって支配されているようである。スギ苗には約20種のアミノ酸がみられ, このうちではシトルリン, グルタミン酸, プロリンなどが量的に多かった。最も特徴的な季節変化はプロリンとシトルリンにみられた。プロリンはいずれの部位でも3〜4月に著しく増加し, 5月には当年生長部位が高かった以外は, いずれの部位でも激減した。プロリンが冬から春にかけて増加することは既往の報告と一致した。シトルリンは枝葉では生長期, とくに生長の盛んな時期に多く, 生長休止期には少なかった。また当年葉は1年葉よりシトルリンを多く含んでいた。幹, 根では2,3の例外(3・4月の幹, 1970年8月の根)を除いてシトルリンが常に一番多く含まれていた。従来多くの針葉樹, たとえばPinus類, Picea glauca, Ginkgo bilobaなどではアルギニンが多いといわれているが, スギ苗にはそれは常に少なかった。シトルリンが高濃度でみられる点において, スギ苗は上記針葉樹類とは著しく異なっていた。
- 1974-10-25
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