植物細胞の生理的性質に対するコロナチンの影響
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概要
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宿主の子葉鞘より調製した遊離プロトプラストにコロナチンを接触させると傷害が起こる。その過程は, 最初原形質流動が停止し, 次いで細胞質が黄褐変化し, やがて細胞質はプロトプラストの一方に片寄って凝集する。明らかに細胞質構造の異常が認められる。しかしこの時点で原形質膜の構造は, 光顕的には健全プロトプラスト同様の状態を保つものが観察される。また, イタリアンライグラス根毛をコロナチンに接触させると, 表皮細胞の細胞質構造に異常が認められるが, その細胞に原形質分離能が保持される場合が観察される。一方, ジャガイモ塊茎柔組織細胞のコロナチンによる肥大作用が, DCCD(原形質膜結合ATPase活性の特異的阻害剤)によって阻害され, またイタリアンライグラス葉片およびジャガイモ塊茎の組織をコロナチンで処理すると, 組織細胞より電解質が漏出する。これらの実験結果は, コロナチンは作用初期の段階で, 植物の原形質膜の生理的性質に各種の影響を与えることが予想される。以上の結果, イタリアンライグラスかさ枯病菌の生産する病原毒素コロナチンの病徴発現機溝を解明するためには, コロナチンの原形質膜に対する生理的作用が, 細胞質の破壊にどのように関連するかを明らかにする必要があろう。
- 日本植物病理学会の論文
- 1981-01-25
著者
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