妊娠家兎におけるUtero-Renal Reflexの存在に関する腎交感神経活動(Renal Sympathetic Nerve Activity)の検討
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概要
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妊娠末期子宮内圧の上昇が母体高血圧発症ならびに腎循環障害を惹起させることを認め, 実験的にも, 妊娠家兎における卵巣近位側での子宮内圧上昇が母獣血圧を上昇させ, 同時に腎交感神経活動を高め, 腎血流量を減少させることを認め, Utero-Renal Reflexの存在を証明してきた. 一方, 頚管近位側での子宮内圧上昇は母獣血圧を上昇させるが,腎交感神経活動の増加は少なく, 腎血流量はむしろ増加することを認めた. そこで, 子宮内圧上昇時における交感神経活動の指標として腎静脈血中カテコーラミンの変動について検討し, 次に, 子宮内圧上昇部位の異なりが腎循環動態の違いをもたらす機序について検討し, さらにUtero-Renal Reflexの経路について検討を企てた. 1. 子宮内圧上昇時の腎交感神経活動の増加は腎静脈血中ノルアドレナリン濃度の上昇をもたらした. 2. 妊娠子宮による腹部大血管への圧迫を除外した時卵巣近位側あるいは頚管近位側子宮内圧の上昇時には母獣血圧は上昇し, 腎交感神経活動も増加した. 3. suspensory ligaments近傍を走行する神経を切断した際には, 卵巣近位側子宮内圧の上昇時においては, もはや腎交感神経活動の増大とそれに伴う腎血流量の低下は認められなかつた. 以上のことより, 妊娠末期高血圧発症には子宮筋伸展に伴う子宮内圧の上昇が関与しているが, 子宮内圧上昇により腎交感神経活動は増加を示し, その結果腎循環が障害される. そして, それはsuspensory ligamentに分布する神経を介してのUtero-Renal Reflexの存在によることが電気生理学的に証明された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1989-06-01
著者
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