妊娠末期母体体位変換における母体循環動態の変動 : 仰臥位高血圧症(supine hypertension)
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概要
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妊娠末期母体体位変換における血圧変化と母体循環動態変動との関係を明らかにすべく, 上下肢血庄, 心機能, 指尖脈波高, thermographyを用い検討した。妊婦 (n=604) に仰臥位10分→左側臥位5分→仰臥位10分の体位変換を行い, 左側臥位→仰臥位への体位変換にて上肢血圧の収縮期あるいは拡張期の変動を測定した。そしてそのいずれかにおいて20 mmHg以上上昇した群をsupine hypertension群, 20 mmHg以上低下した群をsupine hypotension群, それ以外を血圧無変動群とした。1. supine hypertensionは初産婦で48%, 経産婦で38%みられ, 特に妊娠中毒症高血圧型に75%と高頻度にみられた。2. 母体心機能の検討を熱希釈法により行った結果, supine hypertension群では仰臥位時, cardiac output (CO) は23±21%減少, systemic vascular resistance (SVR) は11±5%増加, central venous pressure (CVP) は45±16%, pulmonary capillary wedge pressure (PCWP) は21±9%増加した。一方, 血圧無変動群では, 仰臥位時, COは5±7%減少, SVRは9±5%増加し, CVPは87±69%, PCWPは53±46%それぞれ減少した。impedance法による検討では, 仰臥位時にCOが減少を示す例が, 血圧無変動群 (41%) に比しsupine hypertension群 (70%) において高頻度にみられた。3. 末梢循環動態に関し, 仰臥位での下肢血圧の測定において, supine hypertension群及びsupine hypotension群ともに拡張期血圧がそれぞれ, 19±14%, 9±8%低下を示した。上肢血圧はsupine hypertension群では上昇し, 上下肢の血圧に解離を認めた。指尖脈波高での検討ではsupine hypertension群に下肢波高の減少がみられた。以上より, 妊娠末期母体においては, supine hypotensionのみならずsupine hypertensionもみられ, 特にsupine hypertensionは腹部下大静脈血管並びに下行大動脈血管をも圧迫することにより発症し, 頭側のhyperkinetic circulationと尾側のdepressed hemodynamic circulationという循環動態の解離を招くことを認めた。
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1991-11-01
著者
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