乳児特発性ビタミンK欠乏症の予防 : 特に母体側ビタミンK投与による効果について

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乳児特発性ビタミンK欠乏症の予知、並びに予防法を検討するため、新生児期にビタミンK(V.K)依存性凝血因子活性をヘパプラスチンテスト(HPT)によるscreeningを行い、また、予防のためのV.K投与を特に母体投与による方法で児HPTへの影響を検討し、さらに母体側投与V.Kの母乳更には児への移行の可能性を検するため、V.K投与後の母体血中、母乳中V.K濃度及び児HPT値の変化を検討した。結果 1)生後4日目の正常成熟新生児723例(母乳栄養316例、混合栄養397例、人工栄養10例)のHPT値では、40%以下の低値例が母乳栄養では最も多く47%に、混合栄養では12.1%に、人工栄養では30%に認められた。2)分娩当日より母体に4日間V.K220mg/dayを投与した91例(母乳栄養、混合栄養)では、生後4日目の児ではHPT値40%以下の低値例は1例も認められなかった。3)生後4日のHPT低値例(40%未満)203例にV、K2syrup1回4mgを児に経口投与したところ、うち184例は1回投与で40%以上に改善されたが、19例は2〜4回投与後にはじめて40%以上に改善された。4)生後4日目のHPT40%未満の低値例(11例)について、母体側にV.K115mg1回経口投与の効果を検し(非投与例の10例を対照)、投与翌日の5日目のHPT値では有意の改善がみられた(p<0.02)。5)母体側へV.Kを投与し、母体血中、乳汁中のV.K濃度を検したところ、無投与群では対照の妊娠38週と産褥4日目の血中V.K濃度には差はなく(V.K、0.9〜0.7ng/ml、VK20.5〜0.4ng/ml)、VK、母体投与例では産褥4日目の血中V.K1濃度は12.Ong/ml(p<0.001)、V.K2投与例ではV.K2濃度が8.9ng/ml(p<0.01)と有意に上昇した。母乳中V.K濃度では、V.K_1母体投与群では産褥4日目の母乳中のV.K_1が23.2ng/ml(p<0.001)、VLK_2が4.9ng/ml(p〈0.001)と著明に上昇し、V.K_2投与群ではV.K_2のみが46.6ng/ml(p<0.001)と著明に上昇し且つ児のHPT低値例は1例もなかった。このことは、V.K母体投与が母乳中V.Kを上昇させて児に移行し、児HPT値を改善させることが示唆された。
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1986-06-01

乳児特発性ビタミンK欠乏症の予防 : 特に母体側ビタミンK投与による効果について

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