子宮頚癌患者の免疫能に関する研究 : 免疫皮内反応と血清免疫グロブリンについて

概要

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子宮頚部異形上皮および同癌患者のPPD・PHA皮内反応並びに血清イムノグロブリン値を測定し,同患者の免疫能について検討した.PPD皮内反応およびPHA皮内反応は,進行癌患者で著しく低下していた.(p<0.001).異形上皮,上皮内癌および初期浸潤癌でも両皮内反応の低下傾向が認められたが,平均値でみると統計学的な有意差はなかった.しかし,これらの前癌病変や初期癌をもつ患者の中には,両皮内反応が著明に減少した症例が多数認められるので,頚癌の発生または浸潤開始に免疫現象が関与しているものと考えられる.血清IgG値およびIgM値は,患者群と正常婦人群の問に有意の差が認められなかったが,IgA値は異形上皮,上皮内癌および進行癌では著明に上昇しており,いずれも正常婦人との間に有意差が認められた(異彩上皮および上皮内癌:P<0.01,進行癌:P<0.001).進行癌に認められるIgAの増加は,癌病巣における細菌感染の結果と考えられるが,異形上皮や上皮内癌で認められるIgAの増加は細菌感染によるものとは考え難く,むしろ頚癌との因果関係が近年問題となっている単純ヘルペスウイルス感染による結果であろうと推測される.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1980-08-01