組織消化法によるヒト子宮内膜割断面の超微細形態的観察

概要

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従来SEMにおいては,各種の方法を用いても観察が困難であった自由表面以外のヒト子宮内膜に関しEvan et al.の結合組織消化法及びその変法を修正して,子宮内膜割断面に現われる腺腔内腺細胞及び血管の超微細構造とその分布を観察し,以下の結果を得た.1.a)8N・HC1-Collagenase法は,強酸の高温処理のため,その消化最適時間の判定が,やや困難であった.b)1N・HC1-Collagenase法は,消化に長時間を必要とし,表面の収縮や小孔形成等の組織損傷を生じ易い.c)Trypsin-Collagenase法は,目的とする断面の消化の達成前に,組織全体が崩壊してしまう傾向が大である.d)Hyaluronidase-Collagenase法は,消化時間が最短で,しかも腺と血管の区別がつき易く,充分満足すべき結果が得られた.しかし,どの方法を用いてもHC1及び各々の酵素の濃度,作用温度,作用時間を最適にすれば,ほぼ同様の所見が得られた.2.増殖期後期には,a)腺管は直線状で間隔は狭く,高円柱細胞により構成されており,間質には扁平な内皮細胞により取り囲まれた血管腔が認められた.b)腺腔内腺上皮細胞の表面は,被覆上皮細胞のそれより,平均的に小さいが,球状あるいは紡錘状で,緊満して膨隆を示す.このため相互の大きさの不均一性がはなはだしい.徴絨毛も,やや細く短く不均一で密度も不均等であった.3.分泌期中期では,a)腺は蛇行し多数認められ,腺腔も広い.扁平な内皮細胞により取り囲まれた血管腔は太くて,数も増加しており,内膜組織表層部の被覆上皮直下にもその存在を認めた.b)分泌期腺細胞は,その腺腔表面からみると,増殖期よりも,配列不整,大小不同が著しく,表面は紡錘状,亀甲状,ほぼ球状に突出するものの他に,あまり突出せず,皺壁を形成している細胞も観察された.C)徴絨毛は,太さ,長さが不整で,分布密度も個々の細胞で異たり,形態も先端バチ状のもの,樹枝状を呈し限局性に存在するもの,点状のもの,と様々で,先端バチ状のものはmicroapocrin分泌を示している.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1982-06-01

組織消化法によるヒト子宮内膜割断面の超微細形態的観察

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