女子運動選手の運動負荷時における内分泌学的変動

概要

論文の詳細を見る
近年,女性のスポーツ活動の発展は目覚ましいものがある.しかしながら,一方では,これら女子運動選手の続発性無月経を含む各種月経異常の発現が注目されているが,これらの月経異常発現機転の詳細は未だ解明されていない.そこで,一流の女子運動選手である大学バスケットボール部員5名を被験者として,自転車エルゴメーターによる最大運動負荷試験を実施し,内分泌学的変動,血清ホルモン値の変動を検討した.FSHとLHは,卵砲期では運動負荷の増大にともない著明に低下したが,黄体期では大きな変動は認められなかつた.卵巣性steroid hormoneとしてはestradiolとprogesteroneについて検討した.卵胞期のestradiolには大きな変動は認められなかつたが,黄体期では著明に上昇した.しかし,progesteroneは黄体期においても大きな変動を示さなかつた.すなわち,運動時の卵巣性steroid hormoneの変動は,下垂体前葉からのgonadotropinによる中枢性コントロールによるものではないことを示している.TSHは両期とも変動を示さなかつた.これに対し,prolactinは両期ともに運動負荷にともない著明に上昇した.すなわち,日々の激しいスポーツトレーニングのたびごとにprolactinの上昇が繰返され,これが女子運動選手の黄体機能不全などの各種月経異常発現の重要な要因となつている可能性が示唆される.しかしながら,運動時にはestradiol,FSHおよびLHにも変動が認められており,これらが月経異常発現機転において,どのような役割を果たしているのか,その詳細は不明である.女子運動選手の月経異常発現機転の詳細は未だ解明されておらず,著い女性が大部分であることからも,将来の妊孕性に及ぼす影響など重要な問題を残しており,各方面からの検討が必要である.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1986-01-01

女子運動選手の運動負荷時における内分泌学的変動

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク