月経周期と運動負荷における呼吸・循環器系応答

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女子運動選手の月経周期の各時期による主観的なコンディションの好・不調をみると,卵胞期および排卵期では好調であるが,黄体期および月経期間中は不調であるとする者が多い.このような,月経周期の時期による主観的なコンディションの差異が如何にして起こるのか,その機序は不明である.そこで,女子運動選手として一流である大学バスケットボール部員を対象として,自転車エルゴメーターによる運動負荷試験を実施し,卵胞期および黄体期における呼吸器系および循環器系に及ぼす影響の差を検討した.循環器系機能としては,心電図の連続監視により心拍数を調査した.呼吸器系機能としては,呼気ガスを連続採取し,分時換気量,酸素摂取量,二酸化炭素排出量,呼吸商さらに呼吸数を調査した.また,血中乳酸値についても経時的に測定した.運動負荷の増大にともない,各測定値は著明に上昇した.心拍数は黄体期で常に高値を示した.分時換気量,呼吸商および呼吸数は卵胞期で多い傾向を示した.また,酸素摂取量は黄体期で,二酸化炭素排出量は卵胞期でやや多い傾向を示した.血中乳酸値は,運動負荷量が多くなると,卵胞期で高値を示した.しかし,いずれの測定項目においても,卵胞期と黄体期の値に,統計学的な有意差は認められなかつた.卵胞期と黄体期における運動負荷試験時の呼吸・循環器系の変化を検討したが,これらの成績より,運動選手の主観的なコンディションの変化の起こる機序は解明できない.性周期における内分泌学的環境の変化,とくにprogesteroneの作用についても留意し,詳細な検討が必要であろう.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1986-01-01

月経周期と運動負荷における呼吸・循環器系応答

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