妊娠中毒症の血液凝固学的変化 : とくに臨床症状との関連について
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概要
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妊娠中毒症における抗凝固療法や線溶療法の指標を決めるために,妊娠中毒症の臨床症状別の凝固学的変化を検索し,次の結論を得た.対象は純粋型後期妊娠中毒症59例であり,正常妊娠後期27例を対照とした,また,臨床症状は単一症状を有する群つまり,浮腫群(E-group, n=27), 蛋白尿群(P-group, n=18),高血圧群(H-group,n=8), およびこれら三大症状の合併した群(EPH-group,n=6)に分類した.1.出血,凝固時間はともに妊娠中毒症では正常妊娠に比し軽度の延長がみられ,とくにP-groupおよびEPH-groupに著明であった.2.血小板数(×10^4/mm^3)は正常妊娠25.1±6.91に対し,妊娠中毒症はP-group15.8±5.04, EPH-group 14.8±3.81とともに有意の減少を認めた(p<0.01).3.フィブリノゲン量(mg/dl)は正常妊娠408.0±46.9に対し,妊娠中毒症はP-group 295.5±74.3,EPH-group 310.4±53.6とともに有意に減少していた(p<0.01).4.血清,尿中FDP(μg/ml)はともに妊娠中毒症では上昇し,血清FDPはP-group 38.0±17.4, EPH-group 35.0±12.8, 尿中FDPはP-group 1.57±0.74, EPH-group 1.50±0.93であった.5.赤血球沈降速度(mm/1 hr)は妊娠中毒症では正常妊娠に比し,有意差は認められないものの,EPH-group 27.5±9.6とやや遅延していた.6.血漿第XIII因子はLaurell法,Spot法ともに妊娠中毒症では減少し,とくにP-group, EPH-groupに著明であった.7.プロトロンビン時間および活性部分トロンボプラスチン時間はともに妊娠中毒症で延長し,とくにH-group, EPH-groupに著明であった.8.血小板ADP凝集能は正常妊娠53.2±10.6に対し,妊娠中毒症はE-group 76.6±7.6, P-group 80.3±9.2, H-group 84.3±14.3, EPH-group 79.2±11.4といずれも有意に亢進していた(p<0.01).9.血小板拡張能(μ)は正常妊娠7.83±0.21に対し, 妊娠中毒症はE-group 8.65±0.41, P-group 8.83±0.46, H-group 9.28±0.56, EPH-group 9.26±0.19といずれも有意に亢進していた(p<0.01).10. 各群における妊娠中毒症の重症度の差による検討を行ったところ,重症例は軽症例よりも,有意差は認められないものの,chronic DICの変化が著明であった.以上より,妊娠中毒症の臨床症状の相違によって凝固学的に変化がみられた.つまり,妊娠中毒症のP-group,EPH-group,H-groupよりもchronic DICの程度がつよく示唆され,今後これらの凝固学的変化に基づいた抗凝固療法や線溶療法が必要であると思われる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1982-05-01
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