妊娠時の血液凝固・線溶系の変動 : 脂質代謝との関連について
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概要
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妊娠時における血液凝固亢進・線溶抑制状態に高脂血症がいかに関与するかを検索する目的で, 正常妊娠前期36例, 後期59例を対象に脂質代謝と血液凝固・線溶能の関連について検討し, 次の結論を得た. 1. 妊娠前期は全例, 非高脂血症であつたが, 妊娠後期は血清脂質の増加はみられるものの, 全体の41%に高脂血症が認められた. 2. 妊娠後期の非高脂血症群は妊娠前期に比し, 血小板数の有意の減少 (p<0.02), 血小板 epinephrine およびcollagen凝集能の有意の亢進 (p<0.02), プロトロンビン時間の有意の短縮 (p<0.02), fibrinogenの有意の増加 (p<0.001), plasminogenの有意の増加 (p<0.001) さらにalpha_2-plasmin inhibitorの有意の低下 (p<0.001)を認めた. 3. 妊娠後期における高脂血症群は非高脂血症群に比し, 血小板数の増加傾向および血小板epine-phrine凝集能の軽度の低下がみられた. また, プロトロンビン時間の短縮およびfibrinogenの増加傾向さらに活性部分トロンボプラスチン時間の有意の短縮 (p<0.01)を認めた. Antithrombin IIIは軽度の増加およびalpha_2-plasmin inhibitorは軽度の低下がみられた. 4. 血液凝固・線溶能とtotal cholesterolの相関について, 同一症例による妊娠前期から妊娠後期における変動値を独立対応二資料検定による検討を行うと, 活性部分トロンボプラスチン時間r=-0.5998 (p<0.02)および fibrinogen r=0.6230 (P<0.05)と有意相関がみられた. 以上の結果, 妊娠後期は妊娠前期に比して血液凝固能は亢進を示し, とくにこの傾向は妊娠後期の高脂血症群において顕著にみられたことより, 高脂血症が妊娠後期のhypercoagulable stateの一因をなしていると考えられた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1988-06-01
著者
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