妊娠中の血液凝固・線溶系の変動と分娩時出血量の相関について
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概要
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分娩時の異常出血を予知する試みとして,同一症例の妊娠前期から妊娠後期におげる血液凝固。線溶系の変化と分娩時出血量の相関を妊娠中から分娩時において合併症のみられなかった経膣自然分娩27例を対象に検索し,次の結果を得た.1.妊娠後期は妊娠前期に比してプロトロンビン時間,活性部分トロンボプラスチン時間の短縮fibrinogenの増加,血小板epinephrine,coliagen凝集能の亢進,plasminogenの増加およびalpha_2-plasmin inhibitor の低下がいずれも有意に認められた.2.独立対応二資料検定による同一症例における妊娠前期と妊娠後期の血液凝固・線溶系の変化と分娩時出血量の相関を検索したところ,プロトロンビン時間r=-0.68862,活性部分トロンボプラスチン時間r=-0.77027でいずれも有意相関(p<0.005,p<0.001)が認められた.つまり,妊娠後期のプロトロンビン時間および活性部分トロンボブラスチン時間の値よりも短縮している症例ほど,分娩時出血量の増加がみられた.3.妊娠後期の値が妊娠前期の値よりプロトロンビン時間で0.52秒以上,活性部分トロンボプラスチン時間で3.98秒以上の短縮例に分娩時出血量が500ml以上の異常出血がみられた.4.分娩時出血量500ml以上の異常出血群は500ml未満の正常出血群に比し,プロトロンビン時間,活性部分トロンボブラスチン時間の短縮,fibrinogenの減少,血小板凝集能の亢進およびalpha_2-plasmin inhibitorの減少が有意に認められた.以上のことより,分娩出血量の増加は妊娠後期における高度の血液凝固亢進にともなう二次線溶亢進の結果であることよりも多いと推察された,また,妊娠前期と妊娠後期のプロトロンビン時間および活性部分トロンボブラスチン時間の変動値が分娩時出血量を予測する指標になると思われる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1987-03-01
著者
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