子宮内膜症患者の血清脂質・リポ蛋白に及ぼす Danazol の影響
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概要
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ホルモン剤は、脂質代謝に影響を与えるが、Danazol(以下D)と脂質代謝に関する報告は数少ない。そこで子宮内膜症患者16名にD200又は400mg/4〜6カ月投与し、その血清脂質・リポ蛋白への影響とその臨床的意義について検討した。投与前値と比較するとD投与により血清脂質では総コレステロール22%(p<0.05)、トリグリセライド56%、燐脂質29%、遊離脂肪酸17%、過酸化脂質42%(p<0.01)の低下を、リポ蛋白では高比重リポ蛋白(以下HDL)の低下(コレステロール43%減、p<0.05;トリグリセライド68%減、p<0.05;燐脂質40%、p<0.001)、超低比重リポ蛋白(以下VLDL)の低下(コレステロール73%減;トリグリセライド71%減;燐脂質48%減)を、アポリポ蛋白ではA-I 28%(p<0.001)、A-II 7%(p<0.05)の低下を、そしてリポ蛋白酵素のレシチン・コレステロールアシルトランスフェラーゼ活性(以下LCAT)では35%の低下を来した。一方、低比重リポ蛋白(以下LDL)では軽度の増加傾向を来し、動脈硬化指数(LDLコレステロール/HDLコレステロール)において98%の上昇を招くことが指摘された。これらの変化はVLDLの代謝が促進され、トリグリセライドの異化は進みながらもHDLが増加しないと解され、VLDL-HDLサイクル代謝経路の障害パターンに一致するとみることが出来、LCATの低下もHDLの低下を増強したとみられた。HDLコレステロールの減少あるいはLDLコレステロールの増加により動脈硬化指数の上昇を招くことから、動脈硬化症、さらに心臓・脳血管疾患に対する影響を考えさせられるが、上記の一連の変化は投与開始早期より始まり、投与中止により比較的速やかに回復する可逆的変化と考えられ、通常の投与機関ではまず支障のないものと思われた。
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1987-06-01
著者
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