Gestrinoneの血清脂質・リポ蛋白に及ぼす影響
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概要
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子宮内膜症患者12名にgestrinone (以下G) 5又は10 mg/週4〜6カ月間投与し, その血清脂質・リポ蛋白への影響とその臨床的意義について検討した。投与前値と比較するとG投与により血清脂質では総コレステロール20% (p<0.05), トリグリセライド36% (p<0.05), 燐脂質28% (p<0.01), 過酸化脂質34% (p<0.05) の低下を, リポ蛋白では高比重リポ蛋白 (以下HDL) の低下 (コレステロール41%減, p<0.01;トリグリセライド49%減, p<0.05; 燐脂質38%減, p<0.01) を, アポリポ蛋白 (以下Apo) ではA-I 31% (p<0.01), A-II 13% (p<0.05) の低下を, そしてリポ蛋白酵素のレシチン・コレステロールアシルトランスフェラーゼ活性 (以下LCAT) では53% (p<0.05) の低下を来した。一方, 低比重リポ蛋白 (以下LDL) およびApoBの変化は少なく, 超低比重リポ蛋白 (以下VLDL) でもトリグリセライドで52% (p<0.05) の低下がみられるものの変化は小さい。また血清脂質である遊離脂肪酸では61% (p<0.05) の増加がみられた。投与終了後, これらの変化の多くは速やかに投与前値に回復した。LDLコレステロールとHDLコレステロールの比を動脈硬化指数とすると, これはGの投与週数に伴い上昇し, 投与24週では投与前の92%増 (p<0.01) に上昇した。またこれらの成績を5 mg, 10 mg投与群に分けて検討したが, 両群間に用量効果関係を認めるものは少なかった。以上からGは脂質代謝に対しdanazolとおおむね似たandrogenicな影響を示し, その作用の一つはVLDL-HDLサイクルの代謝経路の障害パターンに一致すると考えられた。これら一連の変化は投与開始早期より始まり, 投与中止により速やかに回復する可逆的変化と考えられ, この程度の投与量および投与期間ではまず通常は支障ないものと思われるが, HDLコレステロールの減少あるいはLDLコレステロールの増加は動脈硬化指数の上昇を招くことから, 動脈硬化症, さらに心臓・脳血管疾患に対する投与には慎重を期するべきと思われた。
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1989-05-01
著者
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