脊椎麻酔による帝王切開時のエフェドリソ投与について
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概要
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脊椎麻酔による帝王切開時の児娩出前の低血圧と娩出後の高血圧を防止するため、ephedrineの少量投与法を工夫した。ephedrineは、1)麻酔15分前に0.3mg/kgの筋注(20例:M群)、2)麻酔直後から希釈液(0.02%)の点滴静注(20例:D群)、3)atropine O.5mgの前投薬と麻酔直後から希釈液の点滴静注(20例:AD群)の3方法で便用した。点滴静注は麻酔直後の最初の2分間に25mlを注入し、その後は収縮期血圧が基準値よりも低下した時に追加した。基準収縮期血圧は産婦を手術台に右側臥位として10分後の値とした。基準収縮期血圧(a)、麻酔爽施から児娩出までの時期での最低収縮期血圧(b)、娩出後の最高収縮期血圧(c)は、それぞれ3群で近似し、どの群でもa<b<cの関係があった。麻酔後の低血圧はM群に1例みられたが、児娩出後の高血圧は1例もなかった。3群の平均血圧も正常範囲の値であった。Ephedrineの平均投与量はM群:18.8mg、D群:12.6mg、AD群:5.2mgで、3群の間に有意差があった。1分および5分Apgar scoreは全例8以上で、群間に差はなかった。3群の産婦動脈血および臍帯血の血液ガス・酸-塩基状態は極めて良好であった。ephedrine希釈液の点滴静注法(D群)は、血圧に対応して投与量を調節でき、筋注法(M群)よりも投与量が少なく、児娩出前の低血圧や娩出後の高血圧を回避しやすい。atropineの前投薬を併用すると(AD群)、母・児の安全を損なうことなくephedrine投与量が一層節減できる。従って、健康な産婦の脊髄麻酔による選択的帝王切開には、他の低血圧予防法(術前急速大量輸血・uterine displacement)とともにAD群のephedrine投与法を実施することが勧められる。
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1987-02-01
著者
-
佐伯 典厚
日生病院
-
佐伯 典厚
日本生命済生会付属日生病院
-
舩渡 孝郎
日本生命済生会付属日生病院
-
船渡 孝郎
日本生命済生会附属日生病院
-
般渡 孝郎
日本生命済生会附属日生病院
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佐伯 典厚
日生病院産婦人科
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春田 道男
日生病院産婦人科
-
船渡 孝郎
日生病院産婦人科
-
中 義章
日生病院産婦人科
-
新海 敏雄
日生病院産婦人科
-
佐伯 典厚
兵庫医科大学 免疫
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