帝王切開時の絨毛間腔血液ガス状態 : 特に酸素化について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
健康な38〜39週の脊椎麻酔による選択的帝王切開例について、絨毛間腔(IV)、産婦動脈(MA)、膀動・静脈(UA・UV)血液ガス値を測定した。OL群(12例、MAPo_<2> : 213.9±31.2mmHg)には麻酔前から経鼻カニューレで、OH群(12例、MAPo_<2> : 482.4±60.0mmHg)には麻酔直後からマスクで酸素を投与したが、RA群(12例、MAPo_<2> : 102.0±8.1mmHg)は空気を呼吸した。全例にuterine displacementを適用し、麻酔前に急速大量輸液とephedrine筋注を行った。Apgarscoreは良好で3群の間に差はなかつた。RA、OL、OH群のIVPo_<2>(?Hg)はそれぞれ49.0±7.1、63.1±14.5、84.6±25.2、IVSo_<2>(酸素飽和度、%)は83.2±6.0、89.6±5.5、94.3±2.6、IVCo_<2>(酸素含有量、ml/dl)は12.7±0.9、13.7±1.0、14.4±0.5で、すべて群間に有意差があった。MAPo_<2>に対するIVPo2の割合(%)はRA群:47.7、OL群:29.5、OH群:17.5で、酸素投与時のIVPo_<2>の増加率はMAPo_<2>のそれに比べて低い。つまり、産婦の吸入酸素濃度をいくら高めてもIVおよびUVPo_<2>が少しずつしか上昇しないのは、主にoxyhemoglobin解離曲線の性質によるものと理解される。RA群のIVpHは7.389±0.013、Pco_<2>は33.9±2.3mmHg、BDは4.4±0.9m mol/lで、他の群のそれらと差がなかつた。UVの酸素値はRA群<OL群<OH群であったが、UV、UAの酸一塩基値は群間に差がなかった。MA・IV・UV間にはpH、Pco_<2>、BDに関しては各群とも、Po_<2>、So_<2>、Co_<2>に関しては全群で正の相関があり、胎盤循環は酸素投与によって障害されないものと推察される。平均(IV-UV)Co_<2>は3群とも、わずかながら負の値となり、胎児血の酸素に対する強い親和性を示唆している。平均(IV-UA)Po_<2>および平均UVPo_<2>、So_<2>、Co_<2>がRA群<OL群<OH群であることから、産婦の吸入酸素濃度またはMA酸素値が高くなるにつれて、(IV-UA)Po_<2>が増大し、それに呼応して胎児への酸素移行が多くなる、という酸素の胎盤通過機序の一つが確認された。
- 1986-06-01
著者
-
佐伯 典厚
日生病院
-
佐伯 典厚
日本生命済生会付属日生病院
-
舩渡 孝郎
日本生命済生会付属日生病院
-
船渡 孝郎
日本生命済生会附属日生病院
-
般渡 孝郎
日本生命済生会附属日生病院
-
角田 俊信
日生病院産婦人科
-
佐伯 典厚
日生病院産婦人科
-
春田 道男
日生病院産婦人科
-
船渡 孝郎
日生病院産婦人科
-
中 義章
日生病院産婦人科
-
新海 敏雄
日生病院産婦人科
関連論文
- P3-266 全腹腔鏡下子宮全摘出術(TLH)後に発症した経腔内臓脱出症(vaginal evisceration:VE)の4例 : 以後の術式,術後管理の変更(Group131 婦人科腫瘍その他6,一般演題,第62回日本産科婦人科学会学術講演会)
- P3-209 高齢者に対する腹腔鏡下手術の安全性に関する検討(Group125 卵巣腫瘍10,一般演題,第62回日本産科婦人科学会学術講演会)
- P2-320 Tubo-ovarian abscessに対する腹腔鏡下手術の有用性(Group83 子宮内膜症3,一般演題,第62回日本産科婦人科学会学術講演会)
- 妊娠中に急速に増大した鼻腔細管性血管腫例
- 最近6年間の当科における子宮筋腫および腺筋症に対する内視鏡下手術の臨床統計
- 症例 腹腔鏡で診断しえた卵管捻転症例
- P2-97 当科で経験した卵管捻転症例(Group45 その他良性腫瘍,一般演題,第61回日本産科婦人科学会学術講演会)
- P2-108 手術既往のある症例に対する腹腔鏡下手術に関する検討(Group46 婦人科手術2,一般演題,第61回日本産科婦人科学会学術講演会)
- P2-113 産婦人科研修医に対する内視鏡手術教育指導システム作成の試み(Group47 婦人科手術3,一般演題,第61回日本産科婦人科学会学術講演会)
- P3-346 Tension free Vaginal Mesh(TVM)法を施行した骨盤臓器脱症例の検討(Group119 ***脱,一般演題,第61回日本産科婦人科学会学術講演会)
- P2-262 当科における子宮鏡下子宮筋腫核出術についての臨床的検討(Group64 子宮筋腫4,一般演題,第60回日本産科婦人科学会学術講演会)
- P2-190 当科におけるTension free vaginal mesh(TVM)手術の検討(Group56 更年期・老年期2,一般演題,第60回日本産科婦人科学会学術講演会)
- 妊娠中の卵巣腫瘍に対する腹腔鏡下手術の検討
- 当科における腹腔鏡下子宮全摘術症例の検討
- 帝王切開時の絨毛間腔血液ガス状態 : 特に酸素化について
- The Role of FBS Component in the Trypanocidal Reaction Mediated by Guinea Pig Serum
- Trypanocidal Activity of Guinea Pig Serum and BSA in the Presence of an FBS Component or Cysteine
- 骨盤位に対する帝王切開時の臍帯血液ガス状態, 頭位のそれとの比較
- 脊椎麻酔による帝王切開時のエフェドリソ投与について
- 左側傾斜位による帝王切開時の母児血の酸-塩基状態 : 脊椎麻酔と全身麻酔の比較
- 分娩中の産婦過換気と酸素吸入が胎児血液ガス状態に及ぼす影響
- 脊椎麻酔下の帝王切開における嫡出所要時間の児に及ぼす影響
- 産婦への持続的酸素投与が胎児酸素化に与える影響
- 320. 産婦への持続的酸素投与が胎児酸素化に与える影響 : 第53群 胎児・新生児 V (318〜323)
- 脊椎麻酔による帝王切開の管理に関する臨床的研究 : 管理上の工夫と母児血の酸 : 塩基状態
- 子宮頚癌術後の抗生物質投与,特に骨盤死腔排出液中のTobramycin濃度について
- P2-32-8 子宮内膜症性卵巣嚢腫に対する腹腔鏡下手術術前ジェノゲストの使用経験 : Gn-RHaとの比較検討(Group134 子宮内膜症・薬剤,一般演題,第63回日本産科婦人科学会学術講演会)
- 子宮体部類内膜腺癌を合併した子宮腺肉腫の1例
- 嚢胞内に多数の“floating balls”を有する卵巣成熟嚢胞性奇形腫の1例
- P2-28-5 GnRHa治療後に急性腹症を発症し敗血症に至った子宮腺筋症内膿瘍の1例(Group84 感染症1,一般演題,第64回日本産科婦人科学会学術講演会)
- P3-14-4 大きな子宮に対する全腹腔鏡下子宮全摘術(TLH)の検討(Group126 婦人科腫瘍・手術2)
- P3-15-7 腹腔鏡下子宮筋腫核出術に対する自己血輸血についての検討(Group127 婦人科腫瘍・手術3)
- P3-15-8 腹腔鏡下における子宮筋腫核出術の妊娠・分娩に対する影響について(Group127 婦人科腫瘍・手術3)
- P3-34-7 腹腔鏡下子宮全摘術(TLH)における尿管損傷 : 回避は可能か?(Group 139 腹腔鏡下手術2,一般演題,公益社団法人日本産科婦人科学会第65回学術講演会)
- P3-34-6 全腹腔鏡下子宮全摘術(TLH)後の腟断端離開 : 再発予防の術式とは(Group 139 腹腔鏡下手術2,一般演題,公益社団法人日本産科婦人科学会第65回学術講演会)
- P2-21-6 当院における早期子宮体がん症例に対する腹腔鏡下手術の経験(Group 59 子宮体部腫瘍・治療3,一般演題,第66回学術講演会)
- P2-5-10 当院における骨盤臓器脱の治療と成績(Group43 骨盤臓器脱,一般演題,公益社団法人日本産科婦人科学会第66回学術講演会)
- P2-5-3 当院での腹腔鏡下仙骨腟固定術(LSC:Laparoscopic Sacral Colpopexy)(Group43 骨盤臓器脱,一般演題,公益社団法人日本産科婦人科学会第66回学術講演会)
- P1-34-3 異所性妊娠に対する薬物療法と手術療法についての検討(Group34 異所性妊娠1,一般演題,公益社団法人日本産科婦人科学会第66回学術講演会)
- P2-59-4 当院での細径鉗子を使用した腹腔鏡下卵巣腫瘍手術(Group 97 腹腔鏡下手術5,一般演題,公益社団法人日本産科婦人科学会第66回学術講演会)
- P1-35-2 子宮温存治療を行った帝王切開瘢痕部妊娠の一例(Group35 異所性妊娠2,一般演題,公益社団法人日本産科婦人科学会第66回学術講演会)