産婦への持続的酸素投与が胎児酸素化に与える影響
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概要
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健康で陣痛のない38〜39週の妊婦に子宮偏位法(uterine displacement)適用下で酸素を投与し,脊麻(脊椎麻酔)による選択的帝王切開を実施した.適用した子宮偏位法は脊麻前には右側臥位,脊麻後には左側傾斜位であつた.酸素は,20例にマスクで5l/min・38〜69分(O_<H2>群),20例に経鼻カニューレで4〜5l/min・33〜62分(O_<H1>群)投与した.産婦動脈(MA),臍動・静脈(UV・UA)の血液ガス・酸-塩基値,Apgar score,児娩出時間などを測定し,過去の短時間酸素投与のO_<II>群(経鼻カニューレで3〜5l/min・9〜17分,16例)の結果と比較した.MAPo_2はO_<H2>群(491.7±61.4mmHg)が他の群(O_<H1>群:244.5±28.0mmHg,O_<II>群:225.0±62.9mmHg)よりも有意に高かった.UVPo_2はO_<H2>群:46.1±7.5mmHg,O_<H1>群:36.1±4.1mmHg,O_<II>群:37.5±6.4mmHg,UVSo_2はO_<H2>群:87.6±6.3%,O_<H1>群:77.3±6.0%,O_<II>群:77.6±10.3%で,P_<O2>・So_2ともO_<H2>群が有意に高かつた.つまりMAPo_2の上昇に伴つてUVPo_2が平均的に増加しており,MAPo_2が300mmHg以上になるとUVPo_2が低下するかplateauに達する,という通説は否定される.UAの酸素化は群間に差がなく,O_<H2>群のUV・UA間Po_2およびSo_2較差は20.6±6.1mmHg,33.8±9.0%で他の群よりも有意に大きいことから,産婦高酸素化による胎児酸素消費量の増加が示唆された.母児の酸-塩基状態およびApgar scoreは3群とも良好であつた.MA・UV・UA相互の間にはPco_2,pH,BDに関して有意な正の相関があり,円滑な胎盤循環の維持が推察される.児の酸素化・酸-塩基状態は,酸素投与時間または児娩出時間との間に有意な相関を示さず,Apgar scoreとも密接な関係をもたなかつた.極端な過換気を回避し,aortocaval compression防止のための子宮偏位法を適用すると,産婦酸素過剰(hyperoxia)が高度になり30分以上60分持続しても,児の高酸素化と正常な酸-塩基状態は保持される.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
著者
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舩渡 孝郎
日本生命済生会付属日生病院
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船渡 孝郎
日本生命済生会附属日生病院
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般渡 孝郎
日本生命済生会附属日生病院
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角田 俊信
日生病院産婦人科
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舩渡 孝郎
日生病院産婦人科
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春田 道男
日生病院産婦人科
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新海 敏雄
日生病院産婦人科
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