人絨毛上皮腫とラット誘発絨毛上皮腫との形態学的比較観察
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概要
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絨毛上皮腫の発生に関して細胞の癌性変異の概念に否定的あるいは軽視的な立場がみられる.そこで人の絨毛上皮腫と著者らが妊娠ラットに誘発した絨毛上皮腫につき,超微形態レベルで共通の癌性々格を確かめると共に,両者の所見の差に注目した. 観察方法としては人正常胎盤絨毛,胞状奇胎,破壊性奇胎および絨毛上皮腫,またラット材料としては正常胎盤および誘発絨毛上皮腫のそれぞれの電顕像につき,10項目の観察項目を設け,正常とよく類似する場合を1点,正常では認め難い異型性の明らかな場合を3点,およびその中間を2点として採点したが,採点の実際にあたつては検討した細胞数は各組織につき最低50個以上であり,また数人の検者により材料の区分をふせて採点を行なつた. その結果,人正常絨毛細胞柱部では最低11点,最高21点,平均16点の得点がみられ,胞状奇胎では最低10点,最高25点,平均17点で,破壊性奇胎では最低11点,最高25点,平均16点が得られ,絨毛上皮腫では最低15点,最高30点,平均20点が得られた.一方,ラット組織では誘発絨毛上皮腫の母細胞とみなされるsmall basophilic cellでは最低12点,最高23点,平均18点で,誘発絨毛上皮腫では最低16点,最高27点,平均19点が得られた.このような平均得点の比較から,人の組織では正常絨毛,胞状奇胎,破壊性奇胎,絨毛上皮腫の順に並び,絨腫と破壊性奇胎,胞状奇胎との間の差は破壊性奇胎,胞状奇胎と正常絨毛との間の差よりもはるかに大であり,ラットにおいても正常細胞と誘発絨毛上皮腫との差は大と認められた. また,人絨毛上皮腫とラット誘発絨毛上皮腫には共通する癌性々格が確認されたが,ラット絨毛上皮腫には人のそれに比べ変性所見が少ないという大きな差も明らかに認められた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1978-09-01
著者
-
細川 勉
慈恵医大
-
細川 勉
東京慈恵会医科大学産婦人科学教室
-
関根 達征
東京慈恵会医科大学青戸病院産婦人科
-
関根 達征
Department Of Obstetrics And Gynecology Aoto Hospital The Jikei University School Of Medicine
-
関根 達征
慈恵医大
-
伊藤 治英
東京慈恵会医科大学産科婦人科学教室
-
塚原 俊明
東京慈恵会医科大学産科婦人科学教室
-
浅野 秀直
東京慈恵会医科大学産科婦人科学教室
-
沢木 国生
東京慈恵会医科大学産科婦人科学教室
-
宮下 明功
東京慈恵会医科大学産科婦人科学教室
-
佐藤 義弘
東京慈恵会医科大学産科婦人科学教室
-
沢木 国生
川崎中央病院
-
浅野 秀直
慈恵医大
-
細川 勉
東京慈恵会医科大学 産婦人科
-
宮下 明功
国立大蔵病院
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