妊娠ラットを用いたyolk sac tumorの誘発実験

概要

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人に発生するyolk sac tumorは胚細胞由来の腫瘍とされているが,その発生に関して未だ不明な点が少なくない.そこで従来より行われている方法と異なり,ラットのfetal membraneを直接発癌剤で処理することによりyolk sac tumorを誘発し,人の実験モデルを作製することを目的とした.すなわち,妊娠10日目のラットを開腹し,子宮に切開を加えてfetal membraneを子宮壁外へ引き出し,これにDMBAを散布した.その後,腹壁から腫瘤を触知したラットについて腫瘤の剔出を行い,病理組織学的に検索を行った.1)処置後約8カ月間に実験ラット32例中22例(68.7%)に腫瘤形成が認められ,その内15例(68.2%)がteratoma,残る7例(31.8%)がyolk sac tumor,またはこれによく類似した腫瘍と診断された.2)後者の肉眼的所見は,人のyolk sac tumorによく類似し,割面には出血,壊死部と充実性の部や海綿状の部が混在した.また,腫瘤は腹腔内に播種性に蔓延を示した.3)また,その組織学的所見は,人のyolk sac tumorの典型的な組織像であるendodermal sinus patternを示し,蛍光抗体法(間接法)によりAFPの局在が確認された.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1982-05-01