妊娠ラット誘発yolk sac tumor の微細構造

概要

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妊娠第10日目のラットのfetal membraneを発癌剤で処理することにより,AFPを産生するYolk sac tumorと認められる腫瘍を誘発し得たので,この腫瘍の電顕レベルの微細構造を観察すると共に,その大きな特徴であるAFPについてもその起源と産生過程を検討した.電顕的に,誘発腫瘍組織の構築は,管腔を中心に放射線状に多角形,または立方形の細胞が配列する模様で,管腔に向かう細胞表面にはmicrovilliが観察される.隣接する細胞間は比較的拡開していて,部分的にinterdigitationを呈する部もあるが,不完全なdesmosomeを形成する部もみられる.核は一般的に大型で,不正彩を呈するものが多く,thread-like nucleolonemaを呈する核小体が認められる.細胞質内のorganellaは豊富で,特に大型,楕円形のmitochondria,発達の良いr-ERが注目される.このr-ERは時に層状に配列し,また,内腔が拡大して中等度のdensityの物質を含むこともある.この物質と同じdensityをもつ顆粒が細胞質内に存在したが,この顆粒は電顕的には均一無構造と認められ,この顆粒が,光顕的なhyaline globuleに相当するものと認められた.このような所見は妊娠前半期のyolk sac endodermal cellに類似するものであり,豊富なr-ERと密接に関連するmitochondriaの存在は,旺盛な蛋白合成を営むことを示唆する所見で,このような細胞に均一円形無構造物質が多く見出されたが,妊娠後半期になると,この物質は減少する傾向がみられた.また,無構造物質を含むr-ERの周辺には豊富な遊離ribosome,glycogen顆粒が認められることから,これらの機能的協調の結果,r-ER内で蛋白合成と同様の過程でAFPが産生,蓄積され,最終的には細胞外へ排出されるものと推察された.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1983-04-01

妊娠ラット誘発yolk sac tumor の微細構造

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