体外受精のための新しい卵巣刺激法(bromocriptine-rebound method) : 卵成熟の改善と妊娠率の上昇
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概要
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体外受精の新しい卵巣刺激法(bromocriptine-rebound法 : BR法)を考案し, その有効性および機序を検討した. GnRH agonist併用hMG法のlong protocol (L法)にて体外受精不成功の既往をもつ, 40歳未満の正常月経周期(PRL値も正常)を有する症例を対象とした. 卵巣刺激は以下の3種を用いた. BR法 : 前周期低温期第4日より連日bromocriptine 2.5mgを内服し, 高温期4日目よりbuserelin acetateを経鼻投与した. 月経開始後3〜14日目にbromocriptine内服を中止し, その7日後よりhMGを連日投与し, 主席卵胞径16〜18mmでhCGを投与した. bromocriptine-continuous法(BC法) : bromocriptineをhCG投与日まで内服. それ以外はBR法と同じ. L法 : bromocriptineを投与しない. それ以外はBR法と同じ. 以上の3種の卵巣刺激法による成績を比較した. 採卵術あたり妊娠率は, BR法(70周期)で56%, L法(46周期)で33%, BC法(7周期)で29%と, BR法で有意に高かった. 採卵数・卵あたり受精分割率は, BR法で8.3・59.1%, L法で8.3・46.3%, BC法で7.0・49.0%と, 採卵数には差がなかったが, 受精分割率はBR法で有意に高かった. 良好形態胚の割合は, BR法57.3%, L法48.0%, BC法41.7%と, BR法で有意に高かった. hMG投与開始日の血清PRL値(ng/ml)は, BR 法14.9±1.5, L法7.9±1.7, BC法2.5±0.7と, BR法で有意に高かった. BR法での血清PRL値は, bromocriptineの投与により, 有意に低下し, 投与中止後に有意に上昇し, この上昇レベルはbromocriptine投与前の値に比しても有意に高く, PRL分泌抑制の反動が認められた. 以上の結果から, BR法は卵の受精・胚発育能を向上して妊娠率を増加し, その機序としては血清PRL値の正常範囲内での上昇が関与していると考えられた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1995-12-01
著者
-
中村 幸雄
杏林大学医学部産科婦人科学教室
-
吉村 泰典
杏林大学医学部産科婦人科学教室
-
生方 良延
杏林大学医学部産科婦人科学教室
-
佐藤 学
杏林大
-
吉村 泰典
杏林大学医学部産婦人科教室
-
勝又 木綿子
杏林大学医学部産婦人科学教室
-
神野 正雄
杏林大学医学部産婦人科学教室
-
佐藤 学
杏林大学医学部産婦人科学教室
-
勝又木 綿子
杏林大
-
勝又 木綿子
杏林大学 産婦人科
-
生方 良延
山近記念総合病院
-
中村 幸雄
杏林大学医学部産婦人科教室
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