学習機構の解析に関する方法論的研究(VI) : 学習能力構造の解析
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概要
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特定の場面では,ある与えられた課題を解決することができたとしても,場面がかわると,そのような課題の解決が不可能になるようなことがしばしばある。このような現象は,能力が多面的な特性をもつことを示す例とみることができる。このような特性は,その能力がもつ構造によって規定されると仮定して,個々の具体的な学習能力の構造をどう抽出し把掻するかを考えた。まず,その構造を考えようとする能力(A)と,これを構成しているとみられる要素(部分能力)(s_1,s_2,…,s_n)とを仮説的に設定し,実際に能力(A)をもっている個人や,十分に備えていない個人,さらに,全く備えていない個人を含む集団に対して,A,s_1,s_2,…,s_nの状態を調査し,Table1のようなA,s_1,s_2,…,s_nの関係が明らかになるような一覧表を作成し,これによって,要素の組み合わせを抽出しようとした。すなわち,(A)の能力が認められる反応型の中で,(s_1,s_2,…,s_n)の中のどれか1つでも,それが認められたくなると,(A)も認められなくなる反応型(分解不可能な構造反応型)を抽出すると,この反応型は,(A)を構成する要素の組み合わせを示すものとみることができる(構造模型I)。次に,これらの要素がどのように結び合っているかを,各要素の共働性を指標として検討した。いま,(s_1)と(s_2),(s_2)と(s_3)とがより強く結びつき,(s_1)と(s_3)とは,あまり強く結びついていないとするとこの関係は近似的に,s_1-s_2-s_3のように図式化でき,さらに(s_t)と(s_j)の相関係数をR(s_t,s_j)で表わすと,上の場合は近似的に,R(s_1,s_2)>R(s_1,s_3)R(s_2,s_3)>R(s_1,s_3)となる。このよう考え方を一般化して,各要素の結びつきの状態を検討した(構造模型II)。さらに,模型(I)の状態を詳細に検討するために,能力(A)の具体的な側面(A_1,A_2,…,A_m)と,これを規定する要素(s_1,s_2,…,s_n)との間にf(s_1,s_2,…,s_n)=(A_1,A_2,…,A_m)という関係を考え,「Aの状態(A_1,A_2,…,A_m)が異なるのは,それを規定する要素(s_1,s_2,…,s_n)に差異があるためである」(f(s_1,s_2,…,s_n)=(A_1,A_2,…,A_m)は一価関数)と仮定した。そうして,(A_1,A_2,…,A_m)のそれぞれの状態に対応する要素(s_1,s_2,…,s_n)の状態を,Table3のような一覧表から抽出しようとした(構造模型(III))。また,(A_1,A_2,…,A_m)に特定の状態(構造)を設定できる場合,これに対応して,要素(s_1,s_2,…,s_n)の構造を考えることができ,これから,(A)の各状態を規定する要素を体系づける方法を検討した(構造模型(IV))。以上のような考え方は,反応構造の分析とみることもできるが,学力検査の誤答分析においては,その誤答にひきおこす原因を,ある程度能力構造の側面から明確にすることができるなど,各方面への活用を考えることが可能である。また,ここにあげた模型は,ある側面からみると,Radix理論のSimplex modelやCircumplex modelに類似していることもわかる。
- 1965-03-31
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