実験教育法による幼児数概念の研究II : 実験教育法適用の前提条件
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概要
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以上の諸結果を総括すれば,そこに,次のようないくつかの点を指摘することが出来る.まず,幼児の数能力に関しては,専攻の諸研究と同様に,それらがけっして白紙状態ではないこと,むしろ,かなり高い数能力が認められることが見いだされた.しかし,そこにはまた,意想外なアンバランスも見いだされる.数唱・計数・加減算・命名・記数など,いわば,小学校算数教科への準備教育ともみられる第1群の課題では,かなり高い数能力が認められる.これに対して,多少判断・対応・集合数・系列化などの第2群の課題では,予想外に成績は低い.一方,家庭における新教育の実情,親の意見・態度などの調査結果を,簡単にようやくすれば次のようである.多くの親が,(ただし,これは中流上層の,いわゆるインテリに属する階層においてであるが).かなり早い時期から,幼児に新教育を行いたいという意見をもっていること.教える内容についてもかなり高い欲求を持っていること,実際に,種々の新教育を行ってもいることなどが知られる.このような家庭教育と幼児の数能力との対応関係はどうなっているだろうか.データのすべてを記載することは,紙面の都合上許されなかったが,綿密に検討した結果は,次のようにいえる.数唱・計数・加減算など先にあげた第1群の課題に属するものについては,家庭教育の効果が認められるようであるが,しかし,第2群に属する課題については,親による新教育の実施あるいはその効果は,前者ほど明らかではない.もちろん,新教育と数能力との関係について,ここにあげたデータは,十分に明証的であるとはいいがたい.幼児の素質的は要因についての統制が不十分であったこと,質問紙の精度が低く,実体を完全に把握し得なかったことなど,いくつかの理由によって,満足な結果を得たとはいいにくい.しかし,それにしても,これらの諸結果は示唆に富んでいると思われる.幼児の数能力は,確かに意想外に高いけれども,それが十分な内容をもっているといえないことは明らかであろう.ある程度の加減算までは可能な子どもが,簡単な対応の課題にすら成功しない事実は,何を意味するだろうか.これについては,おそらくは,両様の解釈が成立するであろう.
- 日本教育心理学会の論文
- 1963-06-30
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