低温耐性の異なるキュウリ品種の低温遭遇葉における酸素ラジカル生成活性
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概要
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低温耐性の異なるキュウリ品種間で, 低温遭遇中およびその後の葉の酸素ラジカル生成活性を比較した.'津春三号', 'シャープI', '四葉'の第1葉齢時の幼植物を暗黒下で3℃または15℃に24時間遭わせたあと, 明/暗期の気温28/22℃, 12時間日長の人工気象室に移すと, 低温遭遇区の葉の周辺部と中央部にネクロシス状の障害が現われ, それは時間とともに拡大した.3品種の低温障害程度(常温に戻して24時間後の葉の障害面積率と, 引き続きガラス室で7日間栽培後の茎葉の生長抑制程度)は'四葉'が最も大きく, 次いで'シャープI', '津春三号'の順であった.また, 脂質過酸化の指標となるマロンジアルデヒド含量は低温遭遇中には増加しなかったが, 常温に戻すと次第に増加した.常温に戻して24時間後の3品種の葉のマロンジアルデヒド含量の増加程度は低温障害程度とほぼ一致した.'四葉'の葉では, 低温遭遇中にNADPH依存性スーパーオキシドと過酸化水素の生成活性が著しく高まった.常温に戻すと過酸化水素生成活性が低下し, ヒドロキシルラジカル生成活性が顕著に高まった.スーパーオキシド生成活性は低温遭遇24時間目に急速に低下したが, 常温に戻した後に再び増大した.'シャープI'では, 常温に戻した後の前半に過酸化水素とヒドロキシルラジカルの生成活性が増大し, 後半にNADPH依存性スーパーオキシド生成活性が増大した.これに対して, '津春三号'では, 低温遭遇葉のNADPH依存性スーパーオキシド生成活性とほぼ比例して変動した.以上の結果から, 酸素ラジカル生成活性の高まりによる膜脂質過酸化の促進がキュウリ葉の低温障害の主要な要因であると考えられる.また, 低温による酸素ラジカル生成活性の高まりにはNADPHオキシダーゼの活性化が関与しており, その活性化程度がキュウリ品種の低温耐性に密接に関係していると推察される.
- 園芸学会の論文
- 1999-07-15
著者
-
橘 昌司
三重大生物資源学部
-
橘 昌司
三重大学生物資源学部園芸植物機能学研究室
-
名田 和義
三重大学生物資源学部
-
名田 和義
三重大院生物資源学研究科
-
沈 文雲
三重大学生物資源学部
-
橘 昌司
三重大学生物資源学部
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