根域の高温によるキュウリの生長抑制における内生サイトカイニンの関与
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概要
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Seedlings of cucumber (Cucumis sativus L., cv. Sharp) were grown in hydroponic culture at root-zone temperatures of 25, 35, and 38℃ for 10 days. Cytokinins in the leaves and roots were quantified at day 5 and 10. Zeatin and its riboside were the main cytokinins in the leaves, while the roots contained a considerable amount of isopentenyladenosine beside the adove two cytokinins. High root-zone temperatures caused a marked decrease in cytokinin concentrations. The change was gradual at 35℃ but very rapid at 38℃, and fluctuated more in the roots than in the leaves. In plants grown at 38℃, cytokinin concentrations in the roots were very low already at day 5; at day 10 both the roots and leaves containd only neglighgible concentrations of cytokinins. Zeatin riboside was more sensitive to high root-zone temperatures that the other cytokinins in the leaves. Cucumber plants were grown at 38℃ for 10 days and treated with 0, 10<special>-6</special>, 10<special>-5</special>, and 10<special>-4</special> M benzylaminopurine (BAP) to leaves in combination with 0, 10<special>-6</special>, and 10<special>-5</special> M abscisic acid (ABA) treatments to roots. Treatment of roots with 10<special>-6</special> M ABA promoted slightly growth of BAP-untreated plans; but 10<special>-5</special> M ABA was inhibitory, irresepective of BAP treatments. On the other hand, foliar sprays of BAP at 10<special>-4</special> M caused a marked increase in the growth rate of ABA-untreated plants. Lower BAP concentrations had no significant effects. This growth-promoting effect of 10<special>-4</special> M BAP sprays to leaves was not observed when the roots were supplied with ABA at either concentrations. The results strongly suggest that inhibition of cytokinin synthesis in the roots and the resultant decrease in endogenous cytokinin concentrations in the leaves are the bases for growth inhibition of cucumber plants at supraoptimal root-zone temperature. 根域の高温による生育抑制に植物体のサイトカイニン濃度が関係しているかどうかを明らかにするため,キュウリ‘シャープI’の幼植物を液温25,35,38℃の培養液で10日間水耕栽培し,5日目と10日目に根と葉のサイトカイニン濃度を測定した.根のサイトカイニン濃度は,35℃区では5日目には25℃区のそれと大差がなかったが,10日目には顕著に低下した.38℃区の根では5日目にすでに著しく低い濃度になっており,10日目にはサイトカイニン活性はほとんど検出されなかった.一方,葉のサイトカイニン濃度に対する根域の高温の影響は根ほどには大きくなかったが,38℃区では5日目にゼアチンリボシドが減少し,10日目にはゼアチンリボシドがさらに減少するとともに,ゼアチン濃度も非常に低くなった. 次に,‘シャープI’を液温25℃と38℃で10日間水耕栽培し,温度処理の開始時に38℃区の植物だけに,0,10<special>-6</special>,10<special>-5</special>,10<special>-4</special> M ベンジルアミノプリン(BAP)の葉面散布と0,10<special>-6</special>,10<special>-5</special> M アブシジン酸(ABA)の培養液添加を組み合わせて処理した.BAP処理は6日後にもう一度行った.ABA無処理の場合には,38℃区のキュウリの生長はBAPの葉面散布によって促進され,10<special>-4</special> M では葉の乾物重が25℃区のそれに近くなったが,ABAを処理した場合にはBAPの生長促進作用がみられなくなった. 以上の結果から,根域の高温によるキュウリの生長抑制には,根でのサイトカイニン合成の抑制とそれによる葉のサイトカイニン濃度の低下が直接関与していると推測される.
- 園藝學會の論文
- 1997-12-15
著者
-
橘 昌司
三重大生物資源学部
-
橘 昌司
三重大学生物資源学部園芸植物機能学研究室
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杜 永臣
三重大学生物資源学部
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王 玉海
三重大学生物資源学部
-
北村 文華
三重大学生物資源学部
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橘 昌司
三重大学生物資源学部
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