キュウリ葉へのABA処理によるチラコイドの光合成電子伝達の熱安定性増大
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概要
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人工気象室(気温25℃,日長12時間,光強度300μmol・m^<-2>・s^<-1>)で育成した第3葉齢時のキュウリ苗を用いて,光合成器官の高温ストレス抵抗性に及ぼすABA葉面散布の影響を調べた.1mM ABA散布後1,3,5日目の葉を暗黒下・45℃で10分間加温し,その前後の第2葉の光合成活性(光下・25℃における酸素発生量)とクロロフィル蛍光収率(Fv/Fm)を測定した.ABA無処理葉では,光合成活性,Fv/Fmともに,高温処理によって顕著に低下した.しかし,ABA処理葉ではいずれのパラメータも高温による低下程度が無処蓬葉に比べて小さかった.このABAの効果はABA処理後の時間経過につれて減少した.そこでABA処理葉と無処理葉から調製したチラコイドを暗黒下・40℃で5分間加温し,その間の光化学系(PS)IIおよびIの電子伝達活性の変化を測定した.ABA処理葉のチラコイドは無処理葉のそれに比べて熱による電子伝達活性の低下程度が小さかったが,いずれもPS II反応中心は熱障害を受けなかった.ABA処理葉のチラコイドは熱処理期間中のマンガンの脱離が少なく,葉のABA処理によってPS IIの酸素発生部位の熱安定性が高まったと考えられた.チラコイドにABAを添加しても電子伝達系の熱安定性は高まらなかった.これらの結果は,葉のABA処理による光合成の高温耐性の高まりには,何らかの機作による酸素発生装置の熱安定性の増大が関係していることを示唆する.しかし,単離チラコイドの熱安定性に対する葉へのABA処理の影響は,インタクト葉の光合成の高温耐性に対するそれに比べて小さかったことから,ABAは酸素発生部位以外の光合成器官の熱安定性にも関与している可能性がある.
- 園芸学会の論文
- 2003-01-15
著者
-
橘 昌司
三重大生物資源学部
-
橘 昌司
三重大学生物資源学部園芸植物機能学研究室
-
名田 和義
三重大学生物資源学部
-
名田 和義
三重大院生物資源学研究科
-
橘 昌司
三重大・生資
-
李 智軍
三重大学生物資源学部
-
橘 昌司
三重大学生物資源学部
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